「伊国版「女はつらいよ ローマ奮闘篇」」これが私の人生設計 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
伊国版「女はつらいよ ローマ奮闘篇」
イタリアの寒村で育ったセレーナ(パオラ・コルテッレージ)は幼少の頃よりデザインの才能が抜きんでていた。
成長して建築家になった彼女は世界各地を舞台に活躍していたが、そろそろ故郷が恋しいとイタリア・ローマに戻ってきた。
戻ったはいいが、一流建築家といえども職はない。
さらに「女性」というだけで門戸は閉ざされてしまう。
困った彼女は、ひょんなことで知りあったゲイのフランチェスコ(ラウル・ボヴァ)を海外出張中の建築家に仕立て上げて、その秘書という名目で有名建築事務所で職を得ることにした・・・というハナシ。
とにかく、イタリア映画特有の泥臭さを感じるコメディ。
なので、クサくて笑えないシーンも多いのだけれど、前向きなセレーナのキャラクターに惹かれて、愉しんで観れました。
かなり強引に笑いを誘おうとして空回りしているところも無きにしも非ずだけれど、物語の端々にイタリアの実情が窺い知れて興味深いです。
例えば・・・
就職がとにかく困難。ひとりの求人に対して100倍、なんてのはザラ。
さらに、女性軽視がヒドイ。雇用契約の契約書の中に、会社側が解雇する際の免責事項に、天変地異と並んで妊娠が掲げられていたり。
そんな環境なのに、職場で深夜遅くまで残業しているのは女性ばかり、とか。
まぁ、笑いの要素として挙げられているのかもしれないが、実情に近いのかもしれません。
また、ヨーロッパの中でイタリアがどう思われているのかも描かれていて、例えば・・・
冒頭、ロンドンで成功しているセレーナが次の仕事先として、中国やドバイではなく、本国イタリアに戻ると言ったときの同僚のアングリした顔。
いまさら、経済不況のイタリアへ戻ってどうなるの、って。
ローマの職場の同僚男性とランチを摂りながら交わす会話のなかで、同僚が言うセリフも興味深い。
「どうして、イタリアへ戻ってきたの? こんな自虐的な国民がいる国へ」
ふーん、そうなんだ、イタリア人=自虐的、っていう発想はなかったなぁ。
というわけで、映画のストーリーは落ち着くところに落ち着くので、意外性はなくて満足度もそこそこなのだけれど、パオラ・コルテッレージとラウル・ボヴァのふたりが魅力的なので、かなり満足。
特に、ラウル・ボヴァのセクシーぶりには瞠目。
また、おしゃべりなセレーナの伯母さんの老女も面白く、映画は登場人物の魅力で保っている、といったところ。