「人にも名画にもルーツ有り!ルーツを探り出すのは自分の核に向き合う事」黄金のアデーレ 名画の帰還 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
人にも名画にもルーツ有り!ルーツを探り出すのは自分の核に向き合う事
日本は島国で単一民族の為に、日常の意識の中で、自己のルーツに思いを馳せる事は中々無いものだ。だが昨今、我が国でも難民問題が浮上する事でようやく、自己のルーツや民族に意識が向く傾向が出てくる時も有るように思う。
この作品の面白さは、ヒロインであるマリアがナチスのユダヤ人迫害の脅威に因って、生まれ育った、愛する母国を追われアメリカに移住しなくてはならなかった彼女の人生。自己のルーツを充分知りながら、その忌まわしい過去の記憶と共に故国を封印してきた哀しいマリアの人生を描いている。
そして、その一方で彼女を助ける若き弁護士は、自己のルーツなど全く気にかける事も無くこれまで普通に暮らしてきたシェーンベルクが、彼女と係る事で、自己のルーツに徐々に目覚めてゆく事で、本当の自分の核とは何か?そのルーツに触れて行く事で、自己の役割やアイデンティティーに目覚め、彼の心と仕事に急激な変化と成長を遂げて行くと言うその対比が興味深かった。
一見真反対の方向を向いていたベクトルを持つ2人が出会う事で融合して、互いの良さを取り入れ急成長を遂げていくと言うもの。
マリア役のヘレン・ミレンの素晴らしさは、敢えて触れる必要もないだろう。
大戦当時の負の歴史に纏わる、実在のエピソードを描き出す事で、焙り出される戦争時に因る惨禍が自然と胸に迫る。
特に映像的に、ユダヤ人収容所等のエグイ映像を観客に見せる事をしなくても、嫌という程のリアルさで、戦時下の脅威が胸に迫り来る。
そして、戦争に係った人々の心の中では、戦争は決して過去形にはなっていない、現実の現在の生活の中にも暗い影を落としている忌まわしき問題で有る事が理解出来る。
この作品が史実を元に描かれている事を考えると、これと同じようなケースは多数有るに違いない。
人が芸術や、人間の良い部分に多く触れる事で、戦争等の負の部分を繰り返す事少なくなればこれ程良い事はない。
温故知新!やはり過去をひも解く事で、より良い未来が創造出来る事を願ってやまない。