劇場公開日 2015年12月19日

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ディーン、君がいた瞬間(とき) : 映画評論・批評

2015年12月8日更新

2015年12月19日よりシネスイッチ銀座ほかにてロードショー

伝説の映画スターと写真家の邂逅をみずみずしく切り取った、知られざる実話

鋭い目つきがトレードマークの俳優デイン・デハーンが、あの伝説の映画スター、ジェームズ・ディーン役を演じる。まさか!と耳を疑うような配役だが、フタを開けてみるとこれが適役なのだ。印象的な声のトーン、それに肩をすぼめる仕草や、この世の儚さを憂えるような表情はそのままに、しかし決してモノマネには陥らない、デハーン流の魂みなぎるディーンがそこには存在した。

時は55年、初主演作「エデンの東」公開直前。ディーンはプロモーションに追われ、フラッとどこかへ行ってしまいたい気持ちに駆られていた。そんな彼に若手写真家のデニス(ロバート・パティンソン)は、LIFE誌掲載のための密着撮影をさせてくれと頼み込む。飄々とかわすディーンをロス、ニューヨークと追いかけるデニス。にわかに心を通わせたふたりは、一緒にディーンの故郷のインディアナまで旅することとなり――。

世界はまだディーンのことを知らない。そして知った次の瞬間、彼は自動車事故で帰らぬ人となる。主演作はわずか3本。

本作は死の半年前、ひとりの無名俳優と写真家がほんの一瞬だけ併走する物語だ。今なお語り継がれるタイムズスクエア前での伝説的な写真はどのようにして生まれたのか。アントン・コービン監督は、その被写体と撮影者の特殊な距離感をつぶさに描き出す。自身もU2やビョークといった数々のアーティストを撮り続ける高名な写真家ゆえに、その駆け引き、心の通い合い、そしてシャッターを切る時の無情な音さえも、実にリアル。本作は単なる映画史の秘話ではない。コービンだからこそ手を伸ばし、掬い取ることのできた、極めて繊細な一瞬なのだ。

また、デハーンに劣らずパティンソンの演技も極めて印象深いものに仕上がった。本作では決定的な一枚をモノにしようと焦燥に駆られる難しい立ち位置を見事に体現。幼い息子とどう接していいのか分からない父親としての肖像には「エデンの東」や「理由なき反抗」で描かれたエッセンスとも通じるものがある。

今年でディーン没後60年。本作の鑑賞後には是非、彼が遺した名作群をチェックされたい。すでに鑑賞済みの人も、本作が新たな光を挿し込ませ、従来とはまた違った楽しみ方ができること請け合いだ。そして最後はやはり誰もがこう呟くことだろう。ディーンは神に魅入られた俳優だった――と。

牛津厚信

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