「テロルで訴える能力」ヒトラー暗殺、13分の誤算 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
テロルで訴える能力
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第二次世界大戦初期の頃のヒトラー暗殺未遂の史実である。但し、主人公エルザーのプライベートの内容はフィクションも織り込まれているとのことだが。
監督は『es』を撮ったオリバー・ヒルシュビーゲルなので、人間観察にかけては定評がある。
作品のストーリーは難しくはないが、その時代のドイツの風紀、世情、戦争の向かい方等々が緊迫感を持って進められていく。
エルザーの手先の器用さ、才能の高さ、どれをとってもこの暗殺を遂行する上でとても欠くことの出来ない能力である。それ以上に作業を貫徹させる辛抱強さは尋常を超えている。
だからこそ、逮捕後のゲシュタポの尋問でも、ナチス側は最後までエルザー一人の犯行を疑い続けた。なぜに終戦直後まで収容所で生かされたのか、そして終戦を待たずして処刑されたのか。ドイツ人をステレオタイプとしてみたとき、正にこのような人間を指すのかと思う。その能力にヒトラーも最後まで処刑を躊躇させたのではないだろうか。
影響があったのかどうかはわからないが、その後、尋問をしたアルトゥール・ネーベは、ヒトラー暗殺計画に荷担したとの罪で、ワイヤーでの絞首刑に送られた。そのシーンでのリアリティは今でも脳裏に焼き付いている。首を括られた直後、ビクンビクンと足を痙攣させ、長い時間それが続いた後、全身が弛緩する。
戦争という非常なリアリティの中で、人はどういう思考をし、そして行動をするのか。
自分に置き換えて考えてみる。陳腐な感想だが、やはり戦争はいらない。
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