「いろんな要素をちりばめた前篇」64 ロクヨン 前編 サブレさんの映画レビュー(感想・評価)
いろんな要素をちりばめた前篇
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「日本映画史上に残る傑作」「横山秀夫最高傑作」と銘打たれた映画の前篇。見る前はどうやって十数年前の事件で話を転がすんだろうと不思議に思っていたが、見れば納得。いろんな要素が主人公の周りに出てきてちょっとずつ本筋に絡んでいく。と言っても、64に絡むのではなく64に関わる主人公に絡むといった具合だが。
前篇としてはかなり良い出来。新聞記者との確執、刑事部と本庁の衝突、娘の家出、そして64を忘れられない人たちが交じり合って物語を作っていく。そしてラストに起こる64模倣事件。ちょっとしたクライマックスの後に慌ただしく事件が展開する様は興奮を掻き立てる。
そう、これは後編のための前振り映画なのだ。映画120分を贅沢に使ったプロローグ。こんな人が出ます。こんな事情があります。その中で主人公はこんな風に振舞います。変わります。からの!事件発生!後編へ続く!後編に期待が膨らむ、爽快な気分で映画館を出ることができるでしょう。
しかし、ちょっと単調かな。説明を尽くさない割には映像描写がたっぷりあるわけではないし、前振りをぽんぽんと散らすのだったらまとめましたよ!と強い主張をしてほしかった。こういった淡白な描写がラストの興奮のためにあると考えると、まあ、うまく機能してるのだけれど。
やっぱり日本の刑事ものはいいなあ、と思わせる作品。最近日本映画の良作が出ていてとても満足。後編もこの調子で面白くあってほしい。
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