「多層的で見応え充分」太陽 しんさくさんの映画レビュー(感想・評価)
多層的で見応え充分
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今年ベスト級!舞台が原作というが、なんとも物語が多層的で見応え充分。
いうまでもなく現代社会構造のメタファー。大袈裟にいうと資本主義と社会主義の対比のようにもとれる。
ノクスは一見豊かに見えるが、管理社会ゆえに発想が貧相で面白みがない。現代日本の若者を揶揄しているかのよう。
一方のキュリオは貧困であるが太陽に縛られない自由という武器がある。自由ゆえに思想が生まれるが、同時に衝突も生まれ、社会としては破綻する。
やはり管理社会に勝てない。しかしいくら管理社会へのアンチテーゼを掲げていても、いざ行ってしまうとあっさりと迎合されてしまう。
まさに60年代から70年代に学生運動に興じた若者が、その後あっさりと資本主義に迎合していったかのよう。
学生運動に限らず、若い頃描いていた理想とは違う現実を生きる全ての大人に突き刺さるメッセージを充分に持ち得るのではないだろうか。
相変わらず入江監督の熱量は衰えしらず。
特に後半の長回しは圧巻。いろんなファクターがごちゃ混ぜになりカオス。頭がクラクラする。すごい。
全般的にテンポもよく飽きさせない。造形も映像も独特で、ファンタジックな世界と現実世界の程よい距離感を保っている。うまい。
神木君のウォーって叫びはいただけないが、役柄的に仕方がないか。
なんといっても門脇麦が最高。満島ひかり、二階堂ふみに並ぶ日本映画界を代表する若手女優であることは間違いない。
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