劇場公開日 2016年3月5日

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「今やれることをやる。」幸せをつかむ歌 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5今やれることをやる。

2016年4月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

幸せ

大女優メリルと娘のメイミーが共演するということで話題になった
本作だったが、それ以上に音楽の完成度が素晴らしいことに驚いた。
自身でエレキを弾き歌いこなすメリルは売れないロック歌手の設定、
小さなライブハウスで常連客にはけっこうな人気という役どころだ。
客の好みに合わせて歌いこなすいかにもな設定や、金無しビンボー
ながら自身の夢を叶えて活き活きとしている中年女の有様をリアル
に演じていて好感触。そこへ幼い頃に捨てた家族の長女が離婚した
と元夫からSOSが入り急遽20年ぶりに家族と再会することになる。
どこぞの芸能人一家や、メリルでいえば昔のクレイマー、クレイマー
で夫と息子を置いて家を出た妻の姿が重なる。女の自立には家族を
捨てることしか手段がない時代もあったろうが、自分が産んだ子供
を捨てるなんて大方の母親にはまず出来ないことであり得ないこと。
自由の定義の難しさを考えさせられた。再婚した元夫の家で子供達
はすくすくと成長し離婚した長女と裏腹に結婚を控えた長男もいた。
デキる後妻の良妻賢母ぶりや長男の婚約者が見せるメリルへの嫌悪
感が的確に表現されており、これじゃどこにも立つ瀬ないわな~と
過去に母親が犯した罪深さを痛感する。この展開ではメリルの側が
圧倒的に不利なのだが、彼女が悪い女で人間としても失格かという
とそうでもない。彼に愛されファンに愛され元夫も少なからずまだ
未練があるようだ。夢を追うために家族を犠牲にしたのは罪と認め、
いま精いっぱい自分がやれることをやるのが母親だという描き方を
今作では魅せている。まったく完璧ではないその母性と人間性に眉
をひそめる親族や知人が「彼女」を知る最後のきっかけがラストでの
演奏なのである。この粋な計らいが絵空事になっていない家族関係
をベストに表現していて素晴らしい。私にはこれしかないから。と
嘗ての子供らにエールを送る母親の大スターではない存在感が素敵。

(ケヴィンもリックもいい父親なんだよね。メリルは幸せ者じゃん)

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ハチコ