「なんというドラマチック」キャロル のさんの映画レビュー(感想・評価)
なんというドラマチック
ここ数年フィクションでも現実でも見たことのないレベルの、あまりに完璧な「ドラマチック」。
もう、なんというかとにかく素晴らしい「ドラマチック」。
自分は同性愛者の社会的扱いがなんたらとか生きざまが云々とかはあまりよく分からないし映画の題材としては正直どうでもいい。とにかくこの映画は「ドラマチック」の描き方が素晴らしい。素晴らしすぎる。素晴らしいにも程があるというか、ごく控えめに言ってマジで涙が止まらないほど素晴らしく完璧過ぎる。「ドラマチック」を作り上げるための配役、脚本、音楽、映像全てがあまりにも完璧。同性愛というテーマも、正直「ドラマチック」を構成するための1要素に過ぎなかったのかなと思える。
ラストシーンが最高、忘れられない、席からなかなか立てなかった、とかレビューでさんざん絶賛されてるの読んでかなりハードル上げまくってから期待しつつ見たけど、まじでラストシーンがやばすぎ。最後のカットがぷつりと暗転して終幕なんだけど、別に感涙のシーンではなかったはずなのにエンドロール流れてる間無性に涙が止まらなかった。何が泣けるってこんなに完璧なドラマチックを精神世界に有している人がいるんだなって思ってしぬほど感動して涙止まらなかった。とにかくそのくらいにはものすごく素敵で美しくてかっこよくて素晴らしい「ドラマチック」なんだよ・・・・
映画ってこれでいいじゃん、って思った。
谷崎と芥川の文学論争うんぬんではないが、題材やストーリーになんの意味がある?ただ一瞬の狂おしいエモーション、思わず溜め息出るような完璧なドラマチックのためだけの映画も良いじゃん。それに特化して極めていたら、それはそれでやはり一流じゃん、と。
以外ネタバレ
ラストがバッドエンドだというレビューほうほうで見かけたけど、、バッドエンドじゃないよね?いや、何をもってハッピー/バッドとするかというお話ならまた別なのかも知れないけれど・・
一人じゃ何も決められなくて何も出来なかったテレーズが、成長して大人になって強くなって、逆境の中でも初めて自分の意思で選んだのがキャロルなのであって、そしてまた、成熟した一人の女性としてテレーズが対峙したとき、「待ってたわ」と言わんばかりに余裕の、妖艶な笑みでいつ何時もずっと変わらず美しい姿で彼女を迎えるのが、キャロルなんですよ・・(そしてこのシーンがもう、何度でも言うけど本当にもんっっっっっ・・・・・・・・っっのすごく、美しくて危うくて切なくてかっこよくてどうしようもなく途徹もなく途方もなくドラマチック)。
キャロルが彼女らしく美しく生きて行くために犠牲にしたのが子供と共にある生活で、そしてまたその生き方の先に待つのが必ずしも幸せなことばかりでないのは想像にかたくないので、そういうことを考えると手放しにハッピーではないのかもしれないけれど、二人にとってはハッピーエンドですよ。キャロルとテレーズの関係を描いた作品ですから、これをバッドエンドとするのは不適切でしょう。
観賞後なぜか懐かしいアニメですがウテナを思い出しました