「まるでヴィスコンティの美の世界を垣間観るような陶酔感!」キャロル Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
まるでヴィスコンティの美の世界を垣間観るような陶酔感!
見事なカメラワーク そして、衣装に始まり小物や、その他何から何まで画面に映る物総てが50年代当時の香りを画面一杯に漂わせていた。
世界大戦に勝利し、強いアメリカに国民の誰もが酔い、未来に向かって只々、大いなる消費生活こそ、人々の生きる総て価値として、その階段を疾走していただろうその頃の匂いが咽返る程に漂う。その一方で、今迄の様に日曜日には家族揃って誰もが教会に集うような伝統文化も崩れ始め、仕事優先に因る家庭崩壊への助走の時代の幕開けとなるその時代背景も良く描かれていた興味深い作品だった。
この時代に生きる人々の意識が少しずつ変化し、女性の誰もが自分の足で立ち、自己の人生を自力で切り開く為に、その生き方の模索を始めた彼女達の揺らぎが見事に描き出されていた作品だ。
しかし、どう考えても原作者のパトリシア・ハイスミスは、この人々の意識変化をLGBT問題として盛り込む事で、自由の幕開けの時代を表現したが、余りにも彼女は時代を先行し過ぎて、幾ら自由の国アメリカと言え、LGBTが一般に認知される事はまだまだ難しい時代だったようだ。
この文学が執筆されていたのは60年以上前なのだ。今更ながら驚きを禁じ得ない。
「太陽がいっぱい」も今考えればBL作品だったとは思いもせずに子供の頃に観たけれど、リメイクされた「リプリー」を観て初めて純BL文学だった事に気が付いたものだ。
アン・リー監督の「ブロークバック・マウンテン」が以前絶賛を博したが、ケイトとルーニー二人に因る対極に位置する2人の芝居が、見事なコンビネーションの異光を放ち、観客を虜にしているが、オスカーの女神は2人に微笑むのだろうか?
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