「アクション娯楽作だけど、 裏コンセプトが深い。」チャッピー 年間100本を劇場で観るシネオさんの映画レビュー(感想・評価)
アクション娯楽作だけど、 裏コンセプトが深い。
やはり期待しちゃいますよね、
「第9地区」のニール・ブロムカンプ監督なんだから。
でもそこは、あまり意識しないで観ましょう。
とにかくデビュー作が衝撃的すぎたから、
ストーリーに予想外を求めると、がっかりするかも。
けど前作を観ると、
ホントは分かりやすいSF映画が
好きなのかもしれないなぁと思います。
今回も御都合主義だけど、
いやいや娯楽作として良く出来てますよ。
監督色はあるし、ストーリーもワクワクします。
男の子はロボコップ的に興奮できて
女の子は母性本能をくすぐられる。
子どももカップルも楽しいと思います。
敵役のヒュー・ジャックマンは、最高だし。
リアルスティールそのまんまやらされちゃって、
きっとジョークなんでしょうけど。
舞台は今作も、
監督こだわりの地ヨハネスブルグ。
実は友人が住んでいたことがあるけど、
今でも治安がかなり悪いらしいです。
自宅には窓に鉄格子は当たり前で、
運転中に信号で停まれば車上荒らしが現れ、
黒人の若者に何回も助手席のガラスを割られたらしい。
そんな危険地帯で警官ロボとして生まれたチャッピーを、
ギャングが強奪して育てていくストーリーです。
ユニークなのは、ロボットを新生児として育成すること。
AIを完璧な知能として描いてきた映画はたくさんあるけど、
この設定は記憶にないですね。
人間のように成長し、
身体の限界を感じ、感情の波に揺られる。
演出が綿密なので、
実写ロボットに感情移入する不思議な体験ができます。
監督が南アフリカにこだわり続けるのは、
理由がある気がするんです。
娯楽的な要素やSFでオブラートに包んでるけど、
南アのアパルトヘイト政策の歴史に対する、
メッセージが込められているんじゃないかと。
肌の色などで、差別することへの憤り。
だから人工知能のチャッピーを人間的に描くことで、
実は容姿なんかで差別できないじゃないかと
訴えてきます。
こういう映画は何も考えないで
アクションを楽しむのもいいけど、
そんな裏コンセプトを意識してみると、
いつもと違う残り方がするかもしれませんよ。