「サイエンスフィクション弄び」チャッピー ドラゴンミズホさんの映画レビュー(感想・評価)
サイエンスフィクション弄び
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命持たざる者が魂を持ったら?という主題は描き方によっては深い映画になるが、この作品はそこを狙っていない。しかし、それにしても釈然としない。
●ロボットが人間の魂を宿すという話なのにロボットも周りの人間もそのことに葛藤していない。チャッピーは自分の存在や命の尊さ、愛の価値などにろくに目覚めることなくひたすら死を恐怖して奔走するだけ。まったく愛せないキャラクターになっている。ピノキオを例にすると、人間社会に振り回されながらも最後に愛に目覚めるから感動する。メデタシメデタシとなるのだ。
ところがこのロボットは愛する者が死んでも、悪いヤツやっつける…とか、科学者が死にかけてるのに病院に連れて行こうともせず、人格をインストールするというグロテスクさ。ブラックユーモアにしか見えない。なのに映画のカラーはハッピーエンドだ。
●周りの人間も科学者も含め単細胞としか思えない浅はかさだ。せめて人口知能を開発する科学者の背景に何か背負った過去や宿命が見えないものか。
●この監督の「第9地区」は良かったけど、その後はパッとしない。サイエンスフィクションの発想を弄んだだけで、人間の葛藤に深みがない。娯楽映画として入り込めない違和感がある。
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