「認知症と尊厳死を安易に結びつけないで」ハッピーエンドの選び方 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
認知症と尊厳死を安易に結びつけないで
イスラエルの老人ホームで暮らす夫ヨヘスケルと妻レバーナ。
レバーナには少々の認知症症状が出ているが、まだ生活に困難を伴うほどではない。
ヨヘスケルは若い時分からの発明好き。
ある日、ヨヘスケルは寝たきりの友人マックスから、安楽死は出来ないかと相談を受ける。
悩んだ末に、患者がタイマーを押すことで点滴薬に劇薬を注入する装置を発明するのであるが・・・というハナシ。
重いテーマを、それほど重くなく進めていく語り口は、観ていて飽きない。
まぁ、扱う死は、ヨヘスケルにとっては身を切られるほどのものではないからだ。
ここいらあたりが、後半この映画を少々浮ついたものしてしまっている。
ヨヘスケルが発明した品はアンダーグラウンドで評判になり、友人以外にも、知人レベルから使いたいと申し出がある。
たしかに、一種の人助けであるが・・・うーむ、どうなのかしらん、といったところ。
終盤、妻レバーナの認知症が加速度的に速くなり・・・さて・・・
というのがこの映画の眼目なのだけれど、それまでヨヘスケルが装置を提供してきた人々とは情況が異なる。
すなわち、
妻レバーナの認知症は急速に進んだものである、
これまで安楽死・尊厳死を望んだ人たちは、永年寝たきりで恢復の余地がない。
これらと比べると、映画の結論は、すこぶる安易である。
認知症については、最近もドキュメンタリー映画『抱擁』などを観たが、恢復のない病ではなく、自己喪失→死という考えがあまりに短絡的で、観ていてまるで共感できない。
そもそも、夫ヨヘスケルは妻の認知症に、向き合っている描写すらないように思える。
そういう意味では、この映画、かなり性質が悪く、この終盤では嫌悪感すら覚えました。