劇場公開日 2015年9月11日

  • 予告編を見る

「威風堂々はいただけない」キングスマン pipiさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5威風堂々はいただけない

2021年2月15日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

楽しい

単純

基本的には高評価している。
続編が出る限り、見続けたいとは思う。
好きな要素は多い。
作品の根底に流れるカッコ良さの追求。
マナーと教養の必要性を背中で説く点も好みだ。
ハリーとエグジーの心の関係性が構築されていくドラマも良い。
アクションシーンはすべて「ジョーク」であり「ダンス」だと考えた方がよいだろう。勇壮で華麗な現代の武舞・Weapon danceなのだ。

コネリー・ボンド、裏切りのサーカス、国際諜報局へのオマージュ。
その他、多岐に渡る映画のパロディ。
わかる観客だけがクスリと笑えるこの感覚は、映画好きなら誰しもが経験した事のある快感のはずだ。

容赦無いシビアな映像も歓迎しよう。グロもエロも悪趣味も、1つの趣味として許容出来る。
コリン・ファースもタロン・エガートンもサミュエル・L・ジャクソンも役にピタリとハマっていて実に良かった。(サミュエルの悪趣味ぶりは期待を裏切らない)

選曲も良かった。21世紀の娯楽映画にはロックとポップスが似つかわしい。
50代のコリンには70〜80年代の名曲を。20代のタロンには2000年以降の曲を。
何も考えず、アタマ空っぽにして、ひたすら娯楽映画に興じたい時には実に適した作品だ。

しかし!
しかしだ!
威風堂々のシーンだけはいただけない。
教会はまだ良かった。パワーバラードのフリーバード。
Lord,knows I can't change(神よ、俺の生き方は変えられない)という歌詞も、トリプルギターバトルのドライブ感も場面にピタリと合っていた。
この曲が亡きD・オールマンに捧げられたものである事や、後にレーナード・スキナードを襲った飛行機事故の悲劇を知っていれば、この曲には「葬儀」の2文字も脳裏を掠める。

しかしだね。
威風堂々のシーンは凍りついたよ。
大量虐殺をショーにしたいのか?
ここは本物の公開処刑を娯楽とした、暗黒の中世か?
この作品は、全世界規模で公開される事を前提に作られている。
視聴者に与える心理的影響力をどう考えているんだ!
現にレビューを拝見すると、このシーンで「笑った」「爆笑した」という感想が圧倒的に多い。
笑うようなことじゃないだろう?

残酷な映像も、それが人の心の「人間らしい情け深さ」に火を灯すものなら意義深い。
しかし、これは真逆じゃないか!
R15ならいいってもんじゃないだろう?映像の影響を受けるのに年齢なんざ関係ない!いい歳した大人だって任侠映画を観たあとは肩で風を切って歩いているものだ。

同じ大量虐殺を描いていても、教会シーンとカラフルポップコーンとじゃ天と地の差があるんだよ。
そこに気付かせず、笑って爽快だった、という感想を抱かせるような映画は作るべきではない、と強く思う。

4.5をつけたいところだが、このシーンへの意見表明として星1つ差し引き3.5としよう。
大変面白い作品であるだけに、非常に残念だ。

pipi