「類を見ないハイテンポ大英帝国スパイアクション」キングスマン sus303s45cさんの映画レビュー(感想・評価)
類を見ないハイテンポ大英帝国スパイアクション
やられました.その一言に尽きます.
「ジェームズ・ボンド」,「イーサン・ハント」.「ジェイソン・ボーン」等々の数々のスタースパイが銀幕に登場してきましたが,ここまで突き抜けたスパイは近年存在しなかったのではないでしょうか.
物語は,秘密諜報組織「キングスマン」の欠員を補充するところから始まります.街で非行に走る青年エグジーは,父親がかつて組織の候補生だったことからスカウトされ,養成所から真のスパイとなるべく試練を乗り越えていくのでありました.
ストーリーは以上のように極めて王道をいくものであり,特筆すべき起伏はありません.ただし,それを構成するキャラクター,アクション,台詞回しをハイテンポにすることにより唯一無二の作品になっています.
まず,キャラクター.
英国紳士であることを第一にする「キングスマン」では,高級スーツと特殊機能付きの日用品を駆使します.仕込み銃兼防弾機能付きの傘,毒薬入りペン,仕込みナイフの靴など,かつてのスパイ七つ道具と呼ばれていそうなものを巧みに最新鋭設備にしているところに惚れ惚れします.紳士たるものマナーを遵守することを忘れないという潔さを感じます.
そして,悪役であるサミュエル・L・ジャクソンがいい味を出しています.あのメイス・ウィンドゥがこんなとち狂ったヒップホッパーみたいになってしまうなんて・・・とこれだけでも十分にずるいです.
小物の悪役どももちょくちょく苛つかせてきながら,物語の終盤であんなことになってしまうなんて.恐らく,この映画で最も意表を突かれる未知の体験をするでしょう.
次に,アクション.
とにかく,ガンアクションが最高です.淡々と拳銃で始末していくのではなく,流れるような格闘術と銃撃の合わせ技には息を飲むばかりです.中盤における最大の山場である協会のシーンは,(少々過激ながらも)現代の殺陣として一見の価値があると思います.
最後に,セリフ.
「マナーが,作るんだ,人間を!」,「James Bond? Jason Bourne?」「No. Jack Bauer!」,「最近のスパイ映画はシリアス過ぎる」,「Brad Pitt ate my SANDWICH!」
もう最高です.脚本家と翻訳家に拍手です.
以上のように,敵対者は問答無用に始末するという強権的な大英帝国のスパイ映画でありながら,適度にコミカルさを織り交ぜ,かといってメタ的にならず,更にアクションでも魅せると何度でも美味しい内容となっています.
是非,映画館で『007/スペクター』の予告を見てから鑑賞してください.