「物足りない」PAN ネバーランド、夢のはじまり SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
物足りない
映像はまあまあ良いが話は面白くない。
そう思ったのは、「本作がピーターパンである必要が全くない」、というのが第一、第二に「しかしピーターパンでなかったら全く魅力がなくなってしまう」映画だと思ったから。
要するに、ピーターパンのネームバリューや表面的な設定だけを利用しているだけで、テーマ、意外性、オリジナリティをほとんど感じられなかった、ということ。
オリジナルのピーターパンの前日譚なのであれば、ピーターパンの由来、ネヴァーランドの正体などについて、もっとつっこんだ話になってしかるべきだと思うが、誰でも思いつくような平易な設定にとどまっていた。
唯一面白いと思ったのは、敵であるはずのフック船長が味方であったこと。一応、ワニや時限爆弾など、オリジナルストーリー(ディズニー版だけの設定だっけ?)のオマージュも入れている。
しかし、もともと親友で味方だったフック船長が、のちのち宿命の敵となる因縁が語られると思いきや、そこには全く触れられずに終わる。
フック船長と言えば一般的イメージは卑怯で臆病で残忍でマヌケ、という感じだが、本作のフック船長の渋いダンディの好漢とは結びつかない。
もちろん、だからこそ意外性があって面白い、と言わせたかったのだろうが、ダークサイドに堕ちた物語(せめて匂わす程度でも)がなければ、面白さには結びつかない。
本作はピーターパンという物語そのものが持つ、哲学性というか深い側面についてもほとんど触れられていない。
それは、なぜピーターパンが大人にならない、永遠の少年なのか、という謎。
大人になりたくない、という気持ち。大人を嫌悪し敵視する気持ち。このテーマを物語的に深めて語ってこそのピーターパンだと思う。
そういう要素が無いわけでもない(ひどい大人に働かされる、など)が、明らかにそれをあからさまに語ることを避けて、無難な世界観におさめようとしているように見える。
単に妖精と人間の混血、というだけではあまりに語りが物足りない。