「夜来香の追憶。」追憶と、踊りながら ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
夜来香の追憶。
今作で惹かれたのは冒頭に流れる李香蘭の「夜来香」の旋律と
男同士がベッドに横たわるラブシーンの映像としての美しさ。
言語や文化の異なる男女が軸となるこの作品では言葉が通い
合う分かり易さが殆どなく、たどたどしくもどかしく、苦い。
事故で亡くなった息子の彼氏を毛嫌いし孤独に浸ろうとする
母親ジュンとそんな母親を救おうと足掻く彼氏のリチャード。
自分を拒否する人にどう振舞いどう対話しどう溶け込むかを
繊細に描いている作品だが、それを反対の立場に置き換えて
想像すると分かり易い。もしも自分の息子や娘が同性愛者で、
それを言わずに亡くなってしまったとしたら。頑なに他人を
拒む母親の孤独が高齢者の友人(彼氏)ができたことによって
和らいでいくが、またしても言語と文化の壁が立ちはだかる。
過去の後悔から臆病になる気持ちは分かるが、いつかは対峙
すべき問題で、息子に代わり手助けしてくれる若者がいると
いうことだけでも有り難いものだと素直に受け止めて欲しい。
ちなみに主役のウィショーは007のQにはとても見えない。
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