「なんとなく「ペーパームーン」に似て、もの悲しい詐欺師親子の旅物語に見える」マジック・イン・ムーンライト きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
なんとなく「ペーパームーン」に似て、もの悲しい詐欺師親子の旅物語に見える
結局、コリン・ファースもエマ・ストーンも眉唾で、モノホンの魔法使いはウッディ・アレンでした~、っておはなし。
たいした芸とも思えないチープな中国魔術師=コリン・ファース。そして母娘で金持ちを騙しながら旅をするインチキ霊能力者の親子。
その両者が、同じ匂いを嗅ぎ付けたのだろうか、お互いに惹かれ合い、いかさま師同士で一緒になるのですね。
これ、なんとなく「ペーパームーン」に似て、もの悲しい詐欺師親子の旅物語に見えました。
1920年代のヨーロッパが舞台です。
あの女性たちのファッションは、女の子たちを最も美しく装わせていた時代のものだと僕は思いますね。
そのまま、ありのままでスクリーンの登場人物みんなが魔法掛かって見えるのが素敵。
イチオシはヴァネッサ叔母さん。クリムトの絵から飛び出してきたようなヘアスタイル。
エマ・ストーンの大作りな顔も、古風なおとぎ話にはピッタリなのです。
男優のコリン・ファースって、素で、ミスタービーンとは反対側にいる人間でしょう。くそ真面目。面白味のない堅物で、人を笑わせるとか楽しませるとかいう芸当にはご本人、とんと興味のない人種と思われる。
劇中の、稚拙で屈折したあの受け答えは、クスクス笑えます。観る側としてはツボにはまれば“その面白くなさが面白い”と思えるのでしょうが・・ダメな人にはダメかもしれません。
そして偽霊媒師=エマストーンがなぜコリン・ファースに夢中になったのかは、これがさっぱりわかりませんが、貧乏な旅暮らしで苦労をかけてきたお母さんのためにも、そしてもちろん自分の安住のためにも、ウクレレ御曹司との結婚のほうがずっと幸せな人生になっただろうと思うんだけどなぁ。
僕がエマストーンなら迷わずあのウクレレ男の妻になってホッとしたいですよ(笑)
で、
エンディングでは案外あっさりと二人が結ばれて「めでたし めでたし」とはこれいかに。
・・恋の魔法で誤魔化しちゃうとか、ウッディアレンらしくないすなおな=変な終わりかたではありました。
えっ?もしかして監督自身も月下美人の香気に惑わされたのかな?
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始終重要なアイテムとして走り回る車 ―
赤いイタリア車、アルファロメオのクラッシックカーが秀逸、
「アルファロメオ・グランスポルト・クアットロ・ルオーテ」ですね。
1960年代に復刻版として92台のみの生産。劇中車として使用されているのはこれ。
初代の原型=1930年式アルファロメオ 6C 1750 グランスポルトは、トヨタ博物館で実物を見ることが出来ます。
監督はアルファロメオがお好きなようで「それでも恋するバルセロナ」でも登用。
実は僕もアルファのオープンカーは長く所有していました。本作品のウッディアレンらしからぬ“不出来”も、それですべて帳消しにしてあげます♪