「良い映画を観れた幸せを感じました」母と暮せば あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
良い映画を観れた幸せを感じました
自然と感動の涙が溢れ出ました
降り積もるようにいろいろな想いが積み重なって、いつの間にか胸が一杯になっていました
元々舞台の為の原作なのだから舞台劇ぽいのは当たり前のこと
それをここまで映画にしたのはやはり山田洋次監督の力でしょう
山田洋次監督作品だから、人情もの、笑い声のあがるユーモアを期待する向きもあるのでしょうがそのような作品では有りません
劇中、劇伴の音楽が要所ごとに鳴っているのですが、それと気付かない程に自然なものです
それ故に浩二のかけるレコードなど、劇中で実際に流れているものだけがクッキリと浮かび上がって記憶に刻まれます
劇的に盛り上げることなく、淡々と静かな日常生活を描いていきます
私達はその日常生活の中で一緒に暮らしている印象を受けるほど
それだから冒頭の坂本龍一の格調高いタイトル曲と、それが展開されたラストシーンの葬送曲とエンドロールに流れる賛美歌のようなコーラスが圧倒的な感動を呼び起こすのだと思います
吉永小百合は、少女時代の彼女自身の性質と彼女の役が一致していた頃のように、役と自身が久々に高いところで入り混じり折り重なった演技を見せています
彼女の作品で初めてその演技を素晴らしいと思えました
長崎ぶらぶら節に続いての長崎弁がとても彼女に似合います
もう70歳
なのにそれでも美しさが失われてはいません
十分、二人目がもう医大を卒業しようかという歳になった子を持つ、50代半ばぐらいの母親に見えます
彼女の役は、家族を全て失い、健康状態も悪く、栄養も取れずに孤独に生きている女性なのですから、実際なら彼女以上に老けていてもおかしくないのです
だからちょうど良いぐらいです
二宮和也も、黒木華も素晴らしい演技だったと思います
良い映画を観れた幸せを感じました