「理性と感情の相克」母と暮せば xtc4241さんの映画レビュー(感想・評価)
理性と感情の相克
この映画は反戦であると同時に、人間という生き物がもっている内面の二重性をも描いた映画といえるのではないか。
たとえば、死んだ息子。
フィアンセのことを愛しているなら解放してあげれば、という母親のことばに反抗する。でも、次の場面ではほんとうに自分以上に町子のことを愛しているならそれでもいいよ、という。そんな奴いないと思うけど・・・とも。
たとえば、その母親。
フィアンセが悩みつつ結婚相手をつれてきた後、息子にいう。なんであなただけがひとりぽっちにならなければならないの、と思わず叫んでしまう。その声を聞いて自己嫌悪に落ちいる。
たとえば、フィアンセの町子。
おかあさん、そんなこと言わないで、私は浩二さんに一生添い遂げるのだから。それでも、新しい結婚相手をつれていく。そして、帰りしな母親を抱きしめて、ごめんない、ごめんなさいと泣く。
この心の揺れこそが大きな見所だろうと思う。
国策によって、翻弄されるひとたち。ひとりひとりの人生。
そして、ここに登場する役者たちにも拍手を送りたい。
母親(吉永小百合)、息子(二宮和也)、フィアンセ(黒木華)の3人だけでなく、結婚相手となった浅野多忠信や、闇市から運んでくるおじさんの加藤健一の存在感、父親の消息を聞いた女の子本田望結のけなげさなど、みんな素晴らしかった。
最後のシーンは賛否両論あるが、過酷な生活を送ったひとたちに対する山田監督のやさしさだろうと、僕は解釈しました。
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