劇場公開日 2015年12月12日

「母、息子、その恋人、それぞれの想いが胸に沁みる良作、・・・たが、ラストは?!」母と暮せば ななまがりさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5母、息子、その恋人、それぞれの想いが胸に沁みる良作、・・・たが、ラストは?!

2015年12月18日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

食事の前のお祈りといい、信心深い、原爆を投下された長崎。
こうした設定背景に、個人の宗教的価値観が、賛否の分かれ目なのかもしれない。

私は、ラストについては、否。

母伸子には、息子浩二の分まで生きてほしかった。
死への誘いに、息子浩二がファンタジーでもいいから、止めてほしかった。
伸子と浩二が、あんなに幸せそうなのも・・・、生と死について、特に死について、その価値観など語れるほどの哲学は持ち合わせていないが、考えてしまった。
当然、見たまんまの感想ではあるが、新しい婚約者ができたとはいえ、あれでは、遺された町子が可哀想過ぎる。

しかし、遺体、遺品も残らないで、「消えてしまった。」
残された遺族を思うと、想像を絶する。
本編は、その3年後を舞台にしている。3年という月日が、長いのか、短いのか、私にはわからない。
そこに死んだはずの息子が登場し、母と思い出話をしている。あり得ないと作品否定しそうな設定ではあるが、ファンタジー感や違和感は、ほとんどなく、受け入れていた。
それほど、想いが深く伝わったと言えよう。

日本を代表する名女優、母役の吉永小百合さんを主役に、息子を嵐の二宮さん、その恋人役を黒木華さんと、やや舞台にありがちな台詞口調ではあるが、喜怒哀楽感、表情の演技が素晴らしい。

町子とその生徒が、父親の生死行方の確認を厚生省のとある部局に行くシーン。
死の結果に、大人である町子が号泣。
もっと悲しいはずの生徒の痛いげな気丈ぶり。
なんのために付いてきたのかと、悔やんでいることを伸子に伝えると、
「子どものために泣いてあげたでしょう」とこの台詞に、痺れた!目頭が熱くなってしまった。
戦後の光景で珍しいわけではなかったに違いない。

反戦というメッセージも盛り込まれているのだろうが、こんな戦後の光景にしてはならない、そんな想いで劇場を後にした。

ななまがり