「傑作ですが、詰め込み過ぎた感が・・・。」セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター bashibaさんの映画レビュー(感想・評価)
傑作ですが、詰め込み過ぎた感が・・・。
今年、観た映画の中で断トツの出来栄えでした。では、なぜ、☆が4個半、なのでしょう。以下にその理由を書いていきます。
地球環境に言及したり、人類学的なことに触れたり、様々な地球の相貌を撮り続けていくのですが、一か所、疑問に思った箇所がありました。「サヘル」と題された一章です。コレラに罹り、死んでゆくアフリカ人(エチオピア北部やルワンダ、でしたか・・・)の姿は人類の抱えている問題が濃縮されているようで、異様な重さがありました。人間の進歩など、所詮、上っ面だけなんだと、実感しました。終盤、語り手が、この映画を「地球へのラブレター」と名付けるのですが、あのような、悲惨なアフリカ人の姿を撮影しておきながら、「ラブレター」などという能天気なことは言えないだろう、と思いました。この世界の不条理を告発するのであれば、その問題に特化した全く別の作品を撮れば良かったのになあ、とも思いました。アフリカの貧困問題はそれだけでもひとつの作品を成り立たせるのに十分な深いテーマであるからです。
そうは云っても、この作品が、原一男の「ゆきゆきて神軍」やアラン・レネの「夜と霧」、クロード・ランズマンの「ショアー」と並んで、ドキュメンタリー映画の傑作として、後世まで語り続けられることは間違いありません。
一人でも多くの人に観てもらいたい作品です。
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