劇場公開日 2015年8月28日

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「リース・ウィザースプーンという傑物」わたしに会うまでの1600キロ ケンイチさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0リース・ウィザースプーンという傑物

2024年3月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

リース・ウィザースプーンって求められた役柄を過不足なくきっちりこなすよね。

主役なら主役、脇役なら脇役をきっちり。
おバカな可愛い子ちゃんでも、微妙にムカ付くタイプの優等生でも、献身的な奥様でも、隙のないキャリアウーマンでも、だめんずにハマるOLでも、金持ちでも、お金持ってない階層の人でもきっちり。

そりゃもう、きっちりと作品のムードに調和してる。

で、下品な振る舞いを演じても演技に品があって、愛嬌があるから悲壮感を漂わせても見てる方はイヤな気持ちにならなくて、お顔がそれほど美形じゃないからパフォーマンスにコクがあるっていうか、良い加減で印象に残っちゃう。

そんなリース・ウィザースプーン(1976年生、公開時38歳)が、プロデューサーとして製作し、自ら主演した本作、すごく複雑な役どころだと思うけど、どのシーンでもすごく本物っぽく見える演技だし、お母さん役のローラ・ダーン(1967年生、公開時47歳)とは9歳しか年齢差がないのに、確かに親子に見えるのが恐ろしい。

この人、どれだけ自分を客観視して自己分析、自己演出して、どれだけ自分をコントロールしてるの!?

この作品、凄い作品ではあるんだけど、人生の苦境に陥った主人公が旅に出て生まれ変わるって話で、要するにお遍路さんの物語。お遍路行路の過程で自分と対話したり、贖罪したり、自然の雄大さを思い知ったり、他人の優しさに触れたり、本作では要するに「親離れ」(と、私は解釈しました)をしたり、そういう映画や小説はゴマンとあるでしょ?でも本作では宗教性とかスピリチュアルなアプローチは一切なくて、非常に理性的で清々しい印象。

プロデューサーとしてこの原作をセレクトして、主演俳優として過酷な役柄をやり遂げて、えらく真っ正直な作品を作り上げちゃった。

すごく地味だけど、かなりの力技を必要とする作品だと思うんですよ、こういう作品って。なのにプロデューサーと主演俳優を両方務めるなんて、何気に途方もない荒技なんじゃないの?

だって俳優としての演技だけ見ても、アカデミー賞を獲得した『ウォーク・ザ・ライン 君につづく道』(2005)に決して劣らないパフォーマンスだと思います。これやりながらプロデューサー業までこなしてたとか、ちょっと信じられないレベル。ホント恐ろしい。

実際、凄い人なんだろうなぁ…リース・ウィザースプーンって。

ケンイチ