「モンタージュ」わたしに会うまでの1600キロ Editing Tell Usさんの映画レビュー(感想・評価)
モンタージュ
今日の作品はフレンチカナダ人監督ジャン=マルク・ヴァレ監督の作品をご紹介。
リース・ウィザースプーンがアカデミー賞主演女優賞でローラ・ダーンが助演女優賞でノミネートされたことでも話題になりました。
ジャン=マルク・ヴァレ監督はダラス・バイヤーズクラブ (Dallas Buyers Club)で一躍有名になった監督です。彼はマーティン・ペンサと共に自分の作品を編集まで行います。
そこで今日は、映画編集の基礎となっているモンタージュについてご紹介しましょう。
モンタージュ (Montage) はもともとフランス語で、映画編集におけるモンタージュとは、実際にみなさんが映画館で見ている映画そのもののことを言います。
具体的にいうと、別のカメラアングルや別の時間軸の2つのショットをつなぎ合わせることをモンタージュと言います。つまりは、現代の映画そのものがモンタージュで出来上がっています。
実際に我々が現実世界で見るときには、視点を切り替えたり、別の場所にジャンプすることはないですよね?映画の世界ではそれが当たり前ですが、それが映画たる最初の所以でもあります。
この映画では、そのモンタージュで遊びまくっていました。
この映画の構成自体がそうなのですが、パシフィック・クレスト・トレイルを歩きながら、それまでに彼女が経験した出来事を回想するというような形式で映画は進んでいきます。
あえて時間軸を一方向に進ませず、PCTを歩いていく中で、実際に主人公が見たもの、感じたことをモンタージュでつなげていくことで、彼女のそれまでの人生を視聴者が主観的に見ることができるようになっています。
このモンタージュを使うことによって、映画は現実よりも一つ次元の高い超現実的なものになっているのです。
たとえば、写真を見たときに、その思い出に浸る瞬間は誰にでもあると思います。しかし、それは実際にその時の映像が見えるのではなく、頭の中で回想し想像しているだけです。
映画ではそれを実際にスクリーンに映します。つまりは、視聴者はキャラクターの頭の中を疑似体験できるということです。それによって、自分の体験と重ね合わせて、ときにはそのキャラクター自身に自分を照らし合わせたり、ときには映画の世界からそのキャラクターを見つめることもあります。
毎回言っていますが、映画はキャラクター。
モンタージュはキャラクターアーク以外の役割もありますが、映画のキャラクターに命を宿す一番大事な手段だと思います。
だから編集はすごい。編集があってこその映画です。