「サンティアゴ・デ・コンポステーラはヨーロッパ お遍路は日本」わたしに会うまでの1600キロ いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
サンティアゴ・デ・コンポステーラはヨーロッパ お遍路は日本
パシフィッククレストトレイル(PCT)というメキシコ国境からアメリカ経由、カナダ国境までアメリカ西海岸を南北に徒歩で縦走するハイキングである。ハイキングとは言え山や川、砂漠を越える、自然と天候を敵に回しながら、その旅人をさながら哲学者に変える程の精神的肉体的な過酷さを乗り越える旅であるとのこと。
その神を感じる位の旅を、母親の死を乗り越えることができない主人公の女性が挑む一種のロードムービーである。
母親の広い愛の理由が分からないまま、母親の夭逝により、自暴自棄になった主人公がドラッグと性欲に溺れ切り、旦那を裏切り、全てを失った時、部屋に飾ってあったPTCの風景写真をみてこの苦行を参加してみる決意をする。
勿論、登山など一つもやったこともない、しかも女性一人の行動。無謀としかいいようがないハイクだが、ある意味死んでも良い程のやけっぱちの気持ちが大部分であったが、歩きを続ける内、自分の浅はかさ、家族の愛、そして自然の雄大さに心が癒され、ありのままを受容れていき、どんどん強くなっていく。
メーターを振り切ってしまうと、その逆バンクもまた然り。人間の精神とは興味深いモノである。
荒んだ心が徐々に整われ、そして真理を見出す機微は、過酷な自然から学んでいくことが最良であることを作品は物語っている。
とても優等生なストーリーで、正直、見ていて眉唾みたいなものは否めない。そんなに単純に人間は変わることがあるだろうかと・・・ 正論なので表だって否定はしないが、とはいえあまりにも素直すぎるかなと思うのは、自分の歪んだ性格の性質なのだろう。
主人公のテーマソングである『コンドルは飛んでいく』、そのほか、そのシーンにマッチした曲がBGMとして、又は主人公の口ずさむエフェクトをかけながら流れる曲がストーリーに色つけをしていて演出は秀逸である。
これ位、素直な人間だったら、私も変われるのだろうなぁと、羨ましく思えた作品であった。