「日本ならではのゴジラ」シン・ゴジラ お酒さんの映画レビュー(感想・評価)
日本ならではのゴジラ
ゴジラ作品は好きで、昭和の一部を除いて全て観てます。好きな作品は
ゴジラ(1954)、
ゴジラvsビオランテ、
ゴジラvsデストロイア、
ゴジラ2000、
ゴジラ(2014)、
アニゴジ3部作、
そして人生ではじめて劇場で2回以上観た、本作です。初代に次いで2番目に好きなゴジラ作品となりました。父は「モスラ対ゴジラ」が一番らしく、ときどき議論するのが好きだったりします。けっきょく好きな特撮作品は「サンダ対ガイラ」でいつも決着を迎える他愛もない議論なんですが。
余談はさておき、本作をレビューしますが、難しい小言は他の方がいいレビューをされてるので、ここは無視して、そっちを参考にしてみてください。僕が熱中した部分と、日本人らしく他の方の否定的意見に対して少しだけ小さな異議を唱えようと思います。
まずは演技っぽい演技をする邦画自体が大嫌いで、なおかつ映画館は料金高いから映画館視聴が嫌いな自分を3回も劇場に駆り立て、1万超えの設定資料を買わせた罪深い邦画、本作の個人的な魅力を頭悪そうに書きます。
・演技を廃したスピード感ある描写
冒頭で述べた通り、邦画は演技っぽい演技をまじめにこなしてるのが滑稽で、どんな作品もコメディに見えてきます。余談挟みますが好きな日本の俳優は山田孝之です。何やっても面白いので大好きです。だから邦画と相性良くて好きなんでしょうね。
しかし、本作では異常ともいえるセリフ量で、役者の無駄な演技をそぎ落としました。そこがホントに良かった。棒読みと捉えてる人は普段、ミュージカルな日常を送ってるんでしょう。それか知人が全員カヨコ・アン・パタースンのどっちかです。言い過ぎました。忘れてください。
とにかく邦画らしい演技っぽい演技がほぼないことがリアリティに繋がってます。
・頭良さそうに見える字幕
マジで気に食わなくも斬新な字幕でした。画面埋めたのは笑いました。最高にクールな評価点です。
・不定形なゴジラ
今作のゴジラは進化します。こんなに形を変えてそれぞれの形態で役割を変えて楽しませてくれる作品、過去にあったでしょうか?
第1形態は、未知、という恐怖を与えてくれました。ゴジラと思わせないようなデザインと演出でよく表現してます。
第2形態は、初見の時第1形態から進化してないと思ってたので、第1形態の姿が見えた事で未知という恐怖から解かれた安堵と、その異常な形相からくる意味のわからない恐怖に襲われ鳥肌でした。女友達がかわいいと言ってたのには驚きましたが、それ聞いた後の2度目の視聴の時かわいいと思っちゃいました。蒲田くん。先入観の大切さを知りました。
余談なんで忘れてください。
第3形態は、初めて未知のそいつをゴジラだ、と認識させました。そこからくる高揚感と、これからどんな絶望を感じさせてくれるんだろうという不安が織りなすカオスが心拍数を上げて、僕の脳はそれを恐怖と捉えました。
第4形態。最初の感想は、ゴジラだ、です。ポスターとPVで見たあいつが、官邸内の景色から一転、スクリーンに突然映されました。第2形態も総理の会見会場から突然だったので、その時と似た恐怖を感じました。そのワンカットからとにかくゴジラの情報を得ようと、スクリーン上の鎌倉に上陸せんとするゴジラに目を走らせたことを記憶してます。見れば見るほどおぞましい見た目。見下したうつろな目、ケロイド状に爛れた皮膚、タバ作戦のときの顔のアップでさらに不揃いの歯が認識でき、より恐怖が強まりました。ただ歩くだけのゴジラにまた、未知、という恐怖が加わり、徐々に感情が高まります。
そして自分が本作で2番目に大好きなシーン。内閣総辞職ビーム。だんだん総理含む内閣のキャラが好きになってきたタイミングでのあのシーン。あそこのながれは完璧です。ゴジラが地殻貫通爆弾?を受けて苦しみ、大量の煙を吐き出し、え、なになになに、と不安になりました。煙は徐々に炎となり、収束して熱線となるあの流れ。音響と映像が最高でした。化学反応とはこういうことを言うんだと実感しました。さらに劇伴の悲しげな雰囲気。Who will know…、と歌われる壮大で悲しくも美しい一連のカットは本当に胸に来ました。初見のときは開いた口が閉まらなかったことを覚えてます。
・死の表現
すごい、と思った新しい死の表現が本作にはありました。コピー機とパソコンに張り紙を貼る。ただそれだけで、初見の時はもったいない、と思いましたが2回目の視聴でそれは使用者の死を表してると理解して、やられた、と思いました。使用者しか知らないパスワードが使用者とともに消えれば、もうそれは張り紙貼って処分するしか無いんでしょう。
・ドタバタ人間ドラマ「ヤシオリ作戦」
シリアスパートから一転してコメディパートです。ゴジラ対ニッポンの消耗戦。皮肉の効いた描写が詰まってて、自分が本作で一番好きなシーンです。
ヤシオリ作戦前の矢口の演説、噛み砕けば国のために死んでこい、という内容です。ここだけ日本らしくないと感じました。皮肉です。
そしてゴジラが熱線を枯渇させるという今までにない弱さを見せ、今まで初代から続くゴジラ作品で壊されるだけの対象だった、ビルや電車の猛攻撃が滑稽にも激アツな描写で描かれます。数多の通勤電車と職場がここで殉職。まだ学生なんでサラリーマンの気持ちはわかりませんが、なんかスカッとしました。
そしてクライマックス。
https://dic.nicovideo.jp/t/a/薬は注射より飲むのに限るぜ、ゴジラさん%21
評価の分かれる第5形態以降ですが、個人的にはゴジラ絡みの悲劇で終わらせて欲しくなかったです。あれは凍結後に始まった進化だと思いますし。あそこから悲劇は続くんでしょう。
第5への進化は凍結前に止められて、スクラップアンドビルドでのし上がる日本の明るい未来で終わって欲しかった。だから☆4.5。
でもこの映画の製作陣によくこんな映画を日本で作りきってくれたなということで、賛辞の意を込めて最終評価は☆5です。
最後に小さく、酷評に異議あり。あと余談。
酷評してる方、映画は楽しんで観てほしいです。アラを探して罵詈雑言とともに書き連ねるのはスカッとして楽しいかもしれません。周りは高評価だけど俺つまんねえと思った、マイノリティな自分は素敵。などなど。
そういった価値観やレビューを否定することはできません。レビューとは作品を観た後の率直な感想のことですし。自分も中立的なレビューを心がけてるので。
しかし酷評してる人のレビューに共通するのは数字が書かれていること。寝ている人がどうこう。売り上げがどうこう。字幕の文字数やセリフ数がどうこう。他の客や売れ行きの観察って楽しいですか?レビューって周りの人や結果の数字がどうだったって伝えるものじゃ無いと思います。大好きなアーティストの詩を借りれば、
「無意識にまたネイビーブルーを手に取り無難を求めちまうぜ、世間の目ばかり気にしちまうぜ」です。
作品じゃなくその作品にくっついてくるもので評価をしているみたいで、はっきり言って悪意を感じました。
でも、悪意を笑い話にしてみましょうよ。友達と笑い話ができれば、それは間違いなくいい映画だと自分は思います。できない映画はダメな映画と評価すればいい。
本作における長ったらしい字幕だって、読み終えてなんか意味ありました?憲法の内容なんて既知の内容でしょう?あれは個人的にはジョークだと思いました。笑ってください。あれこそ政府から国民を守る日本国憲法です。長ったらしい役職の字幕も、こんな役職あんのかよと草生やしてください。
ヤシオリ作戦にリアリティが無い、という人。ヤシオリ作戦絡みのコメディパート全体が現代日本が再現できそうで実現できない"虚構"である、と理解してください。
知識でガッチガチの作品と、嘘で紐解いた作品、どっちがとっつきやすいですか?どっちが楽しいでしょうか?僕は後者の方が楽しいです。今作における嘘は「ヤシオリ作戦」です。ゴジラだろ、と言いたいかもしれませんが、"ゴジラ=災害"を"倒す=避ける"ために展開する、最適な"ヤシオリ作戦=災害対策法案"こそ本作の嘘です。
価値観の押し付けはしませんが、その映画が何を事実と語って、どんな嘘で柔らかくしたかを理解して観てほしいなと個人的に思います。映画を楽しみましょう。
以下余談です。
同時期に上映してた「君の名は。」と本作は災害映画という共通点があり、前者は災害自体を無かったことにして希望のある未来を得た。後者は災害を受け止め危機と隣り合わせでも希望のある未来を得た。僕はこの点で本作の方が優れてると判断し、「君の名は。」ではなくこちらに熱中しました。
あのゴジラに熱中して実家の父と過去作見返した数ヶ月が幸せでした。映画を語れる知人の存在って大事ですよね。家族や友人、映画を観るたびに大切にしたいと痛感します。ゴジラ作品のような長期シリーズには、年齢の垣根を超えた関係を築いてくれるという魅力がありますしね。本作は劇場BDアマゾンプライム合わせて1人で3回、知人と何回か、覚えてないです、それくらい観ました。ホントにいい映画です。
長文で拙い文章、すみません。やるせなくて感情論を混ぜてしまいました。