劇場公開日 2016年7月29日

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「怒れる優しい日本人にこそ見て欲しい」シン・ゴジラ larkさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0怒れる優しい日本人にこそ見て欲しい

2016年8月16日
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鑑賞方法:映画館

興奮

低評価の方はこの作品に初代ゴジラ以降の怪獣プロレスを求めていたのだと思います。であればなる程、この作品が低評価になるのも肯けます。
端的にいうと、USAジラを、ちゃんと再定義したゴジラに置き換えて、リアリティマシマシにして舞台を日本にした映画です。
但し、本来のゴジラが持つメッセージ性や風刺性などはしっかり受け継がれているので、マグロ食ってるようなのとは比較にならない程濃密な映画に仕上がっています。
前述の通り、ゴジラ対〇〇や、平成VS、ミレニアムシリーズのようなゴジラが好きな方には少し物足りないかも知れませんが、私は今の日本に、もっと還元して今自分が所属している何らかのコミュニティに対して、やり場の無い憤りを抱いている若い世代にこそ、この映画を是非見て欲しいと思います。

演者さんは、邦画に蔓延る人気と話題性重視の配役ではなく、いぶし銀の実力派ばかりです。「この人が居れば若手ばかりでも演技に奥行が生まれて映画全体のレベルが上がるよね」ってレベルの人がわんさか出て来るので、演技力の平均値がとんでもないことになってます。
石原さとみさんは、英語訛りの強い演技をされており(帰国子女にありがちな、カタカナ語の部分だけメチャクチャ発音が良くなるアレです)、中にはこれを受け付けないという方もいると思いますが、私はギリギリ、シリアスの範疇に踏み止まっていると感じました。きっと役作りなどに真剣に取り組んだ結果なのだと、パンフレットのインタビューを読み感じました。未見ですが実写版進撃の巨人で、彼女の演技だけは評価する意見をちらほら目にするのは、こういうところなのだろうなと、納得しました。

音楽はエヴァのBGMを担当された鷺巣詩郎さんが作成されており、エヴァでお馴染みのDecisive Battleも使用されています。抵抗があるかもしれませんが、作戦立案や進行のシーンにはピッタリですし、庵野色を期待している人へのサービスとしても、良い選択だったと思います。
また、ゴジラ音楽と言えば欠かせない、伊福部昭さんの楽曲も、ちゃんと要所要所で使用されています。監督がゴジラファンの気持ちをよく理解されているのだなと感じました。劇中で使用されているのはアレンジ版ですが、エンドロールでは原曲が流れますので聴き比べてみてはいかがでしょうか。

演出やカット割りなど、庵野監督の仕事の部分を見ると、監督の良い部分がふんだんに見て取れます。特に「有事の合間の日常」の表現は好きですね。ゴジラが来ているのに日常?と思うかもしれませんが、平和ボケした日本では意外と現実でもこうなるんじゃないかと思うので、作品が大事にしているリアリティの形成に大きく貢献していると思います。

肝心のゴジラですが、前述の通り、この作品ではゴジラを再定義しており、従来のヒーロー性の強い「怪獣王」から、災害性が強く、人間の罪と罰を体現する初代のゴジラに近くなっています。同時に唯一の核兵器被害国であり、3.11を経験した日本人の怒りと哀しみを色濃く写した存在だと、私は感じました。

視聴中、前半はゴジラを応援する自分がいました。東京を破壊するシーンではゴジラに対して畏敬の念すら感じつつ、カタルシスに震えました(ラピュタの雷の時のムスカ大佐の気分に近い?)。
中二病的な物言いになりますが、核、核兵器を生み出した人間、そして今の日本のダメな部分、改善しようとしても障害になる要素。そういったものを全てぶち壊してくれるゴジラを英雄のように感じたのです。
しかし、ある出来事をきっかけに日本の反撃が始まります。そうなってからはずっと登場人物達を応援しっぱなしでした。

日本はWW2から、幾度かの復興と崩壊の危機(3.11等)を経て今日まで歩んできましたが、内外問わず障害はあって、中々理想の国とは言い難いのが現状です。
いっそみんな壊れてしまえば良いと思うこともあります。でも、全部なくなってしまえば良いとは思えない。日本はまだ捨てたもんじゃないし、そう思わせてくれる人達が沢山いる。
この映画は、そんな二律背反の感情を剥き出しにし、最後は前向きに背中を押してくれました。
監督は既存のゴジラのイメージを一旦崩して、新しい物を打ち立てました。
スクラップ&ビルド。
劇中で登場するこの言葉が、きっとこの映画の根源的なメッセージなのでしょう。

スネーク・オーガニックミント
2016年8月18日

チラ裏ですが...
低評価なレビューを書いている方にこそ、低評価な理由を論理的に書いて頂きたいのですが、そこまで書かれていなかったり、もっと酷いと不快感を書き殴っているだけだったり...
楽しめない物に1800円払ってしまって感情的になるのも分かりますが、ただの感情の捌け口になってしまっているのは、折角自分と反対の意見を知ることが出来る場なのに勿体無いなと。

スネーク・オーガニックミント