劇場公開日 2016年7月29日

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「人間の可能性を見た」シン・ゴジラ uronDoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5人間の可能性を見た

2016年8月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

興奮

シンゴジラで良かった処はゴジラという巨大な虚構を、現実感を伴った人間(組織)のドラマで包み込むことでスクリーンの向こうの世界を自分と地続きの世界のように感じさせてくれた点です。

これまでゴジラはテレビで数本見ただけですが、そこに映っているゴジラも対応する人間(組織)も現実感は薄くキャラクターにも物語にも気持ちを通わせる事は出来ませんでした。
一方の本作。ゴジラは人間の都合や思いなど寄せ付ける余地もない禍々しさの塊で、天災がゴジラの形に固定されたようです。

これに対応するのは当然ながら政府、自衛隊、消防や警察などの各組織であって過去作にあった科特隊のような超常部隊の超常兵器など出てきません。
それどころか自衛隊の出動にも何ステップもの会議や法整備に時間とエネルギーを割かれるという日本的な組織体制が描かれ、いざ出動したものの政府から幕僚、現場指揮官、隊員へと攻撃可否が上意下達される迂遠な様がいちいち差し込まれる徹底ぶり。
だがそれが良い。この上意下達の様こそが自分が本作に没入できた一番の理由。
小さな描写の数々を細かいカット割りでテンポ良くつないでいく事でドラマにスピード感を持たせつつ緊張感も持続させる。
登場人物も総理は総理として決断の重責を負う一方、役名も付かない1カットしか登場しない多数のキャラクター達も同様に懸命に働く場面を描くことで、本当に日本の総力戦であることを納得させてくれる。

大きな組織が動くには何をするにも沢山の人間がかかわらないと機能しない。
上流、下流といった上下関係ではなく、全体が有機的に繋がることで組織としてのパフォーマンスを発揮する。
本作でも大きな才能を発揮するキャラクターは何人も出てくるものの、それも所詮は組織の中の一つのパーツでしかない事を描きつつも、そのパーツがそれぞれの場所でそれぞれの役割を最大限に果たそうとすることで絶望しかないと思われた状況に一縷の望みを繋ぎ止めて見せてくれる。
お仕事映画としてとてもよく出来ていると共に、人生を肯定的に捉える目を開かせてくれる作品です。同様の感覚はディズニー映画のシュガーラッシュからももらいました。
また本作のゴジラは3・11などの自然災害のメタファーと捉えることもでき、日本各所の復興に対して在住者のみならず日本全体として向かい合う気持ちと核という強大なエネルギーへの畏怖を新たにさせてもらえる作品でもあります。

と、絶賛の態で書きましたが他の皆さんが言われている通り突っ込み処のような箇所もありました。
ただそれも見る人の世代、特撮への好悪などなど個々人の感覚によりますしまずは一見されてみてはと思います。

uronDo