劇場公開日 2016年7月29日

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「新たな空想科学特撮映画の誕生」シン・ゴジラ atsumanさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0新たな空想科学特撮映画の誕生

2016年8月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

幸せ

シン・ゴジラを観た。
初日に一人で、そして翌日に妻と二人で計二回の鑑賞をした。

初めて映画館で観た映画がゴジラ対ヘドラである私は
チャンピオン祭り世代であり、今日まで公開された東宝特撮作品
またハリウッド製ゴジラも含め全て鑑賞済みである。

そして20代後半でエヴァに夢中になった世代、でもある。

だからこそ今回のシン・ゴジラ、期待より不安
というより諦観というような気分で公開初日を待っていた。
いわゆる、”お布施”をする気分である。

しかし、開巻10分でこの作品の異常性に飲み込まれ、
中盤ではこみ上げる感情を押し殺しながら
画面にくぎ付けになっていた。

振り返れば、終盤はかのヤシマ作戦そのものであり、
巷で言われている”エヴァのいないエヴァ”という感想は、
表層的にはその通りであるし
長谷川博巳演ずる矢口蘭堂を筆頭に、国を守ろうと一丸で
災厄に立ち向かう人々の姿は、3.11以後の疲弊した日本に対する
人間賛歌として現代性を獲得しているとも思う。

だが、私が個人的に最も感銘を受けたのは、
1954年に制作された”ゴジラ”を隅々までリスペクトしたうえで
庵野総監督が同じ土俵で勝負を仕掛けた事である。

伝わりにくいかもしれないが、
昭和29年に初めて”ゴジラ”に触れた観客と同じ驚きを
現在の観客に味わわせてやろうという意気込み、
と言い換えてもいい。

”怪獣”という概念を広めた初代ゴジラだが、
それを初めて観た観客はさぞ驚き
また、その化け物をどう退治するのか固唾を飲んで凝視していたで
あろうことは想像に難くない。

それから六十二年、もはや国民的存在と言えるゴジラを、
この作品では形容しがたい異形の物として描く事にチャレンジし、
劇中の登場人物と同様の驚きと恐怖心を我々観客に提示してくる。

次に何が起こるか解からない見世物小屋的恐ろしさを実現させた
今作は、初代以来初めて作られた”我々が知る怪獣”の登場しない
ゴジラの映画であり、本当の意味で原点回帰を果たしているのだ。

ただ好きだというだけでなく、その本質を深く理解した庵野総監督
だからこそ作り得た唯一無二の”東宝空想科学特撮映画”が本作
である。
盟友樋口監督の外連味ある画作りとともに、あらゆる意味で贅沢な
この作品はやはり劇場の大画面がふさわしい。

ちなみに、石原さとみが綺麗だから、という理由で
付き合ってくれた妻の感想。
(エヴァは開始10分で居眠りしちゃう一般人です)

”長谷川博己カッコいい!ゴジラ痛そうで可哀そう…
 なんで掌がずっと上向いてるの?”でした。

退屈はしなかったようで何よりです…

atsuman