「日本とゴジラ」シン・ゴジラ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
日本とゴジラ
12年。
今経ってみると短かったが、やはりスクリーンに怪獣王が居ない12年は長かった。
2014年、節目の生誕60年のハリウッド版には興奮すると共に、一抹の嫉妬もあった。
折しも、東日本大震災からの原発事故で日本に放射能の脅威が降り注ぎ、被曝者であるゴジラが怒りの声を上げる時。
今こそ、日本のゴジラを!
諸事情ですぐには叶わなかったが、それから2年、遂に…!
何だかんだ言って今年一番の待望作。
見終えた今、率直な感想を。
期待と共に不安もあったが、
「私は見た。これは確かに、“シン(新、真、神、進)・ゴジラ”だ」
不安を払拭する予想以上の出来映え!
日本のゴジラが『ファイナル・ウォーズ』で終わりでなくて本当に良かった!
まさしく、蘇生、覚醒、再生!
昔のゴジラを期待すると戸惑ってしまうだろう。が、
これまで枠内に留まるしか出来なかった日本のゴジラだが、その枠を破壊した、全く新しい、見た事の無いゴジラ!
最恐にして最凶の今回のゴジラに嘘偽りは無い。
今回の“アレ”はヤバい! 驚愕の荒業まで披露!
さながら、“ドキュメント:現代日本にゴジラが現れたら?”。
徹底的、圧倒的なまでのリアリズム。
気迫すら感じた。
やったじゃん、庵野さん、樋口さん!
でも何より感心したのは、日本の今を描き、ゴジラの存在意義をしっかり反映させ、そして自分が望む形が実現されていたからだった。
ゴジラは、日本が今直面している危機のメタファー。
第一作のそれは、戦争、原爆、水爆であった。
今回のゴジラは、突如襲う未曾有の大災害、そして放射能。
ただ街を破壊し、敵怪獣と闘うだけじゃない。ただの怪獣王でもヒーローでもない。それら危機を具現化させ意味を持たせてこそ、ゴジラなのだ。
だから、今回のゴジラは“怖い”のだ。
そんな危機に直面し、右往左往、ダラダラダラダラ会議会議会議…、何も出来ず全て後手に回り、被害はどんどん増えていく…。
東日本大震災を身を持って経験したというのに、今年また日本を襲った大震災…。
それに日本は対応出来たか。
昔からゴジラ映画で日本の危機管理能力の低さを突いて欲しいと思っていた。
ゴジラが現れたら日本中隅々まで激震する。
政府、対策チーム、自衛隊、そして世界の動き…群像劇はゴジラ映画に於いて本来在るべきスタイル。(強いて言えば、マスコミや一般人にもメインの登場人物を)
“アレ”によって炎の海と化す街。
地獄のような光景は第一作目以来の悪夢。
初上陸したゴジラには誰もが驚かされるだろう。
今回のゴジラの姿には何かあると思っていたが、やっぱり!
これは事前情報ナシで見て貰いたいが、“進化”とだけ言っておこう。
今まで裏設定でしかなかったゴジラの進化を堂々と見せてくれた。
昔から熱狂的なゴジラ好きなので、自分なりのゴジラ映画を空想した事がある。
その時思い付いた危機管理、破壊の悪夢、進化のアイデアをまさかやってくれて、これらには感激した。
日本のゴジラとしては初めて、第一作の世界から切り離した事にも称賛を送りたい。
これまでの国産ゴジラは第一作目が敷いた安全なレールの上を走っていたが、そのレールを下りるのは挑戦、もしくはバッシング覚悟であっただろう。
そこに、新しいゴジラを創る最大の意気込みを感じた。
その上で、第一作や過去シリーズへの溢れんばかりのリスペクト、オマージュ…いや、これはもう“愛”。
タブーに果敢に挑んだ点がその最たるものなのだが、さらに、
メインタイトルや“呉爾羅”の名の由来の島、登場人物名や台詞までファンならニヤリとしてしまう小ネタの数々。
庵野&樋口のヲタ愛大爆発!堪んねぇ!
映画はおそらく今後、賛否両論分かれるだろう。
ボロクソにも叩かれるだろう。
確かに難点もあるにはある。
まず、その台詞量、情報量。
凄まじいとは聞いていたが、これほどまでとは…。
疾走し続ける超テンポの演出、よくぞ覚えた早口台詞、スタッフ・キャストには拍手を贈りたいが、正直ついていくのがやっと…。
フルCGゴジラは素晴らしいが、ちょっとぎこちない動きは、日本の今後のモーション・キャプチャー技術の課題になるだろう。
伊福部音楽をまた劇場で聞けたこの喜び。
が、音楽も泣き声も破壊音もかつての音源をそのまま使用し、映像との微妙なズレが…。(エンディングの伊福部メドレー、『vsメカゴジラ』のあのテーマ曲は勿論激アツだが、自分だったら『vsギドラ』のエンディング曲で締めるけどなぁ…)
エヴァネタは人によっては鼻に付くかもしれない。あの音楽なんてまんま。…
(しかし、それから何度も何度も見ると、難点と感じた点全てがクセになる!
超テンポ&早口長台詞はコミカルにも感じるし、
破壊音などは懐かしく耳に馴染み、
そして、伊福部音楽! ヤシオリ作戦シーンに流れる“宇宙大戦争マーチ”は神がかり的な名シーン!)
ゴジラが好きだからこそ細かい所が気になってしまうが、それでも本作は、今現在日本で創り得うる最上級のゴジラ!
今回のゴジラを、使徒または巨神兵と指摘する声もある。
これは逆。使徒や巨神兵がゴジラなのだ。
怪獣バトルが見たかったという声もいずれ出るだろう。
確かに“敵怪獣”は居ない。が、“ライバル”は居る。ゴジラ永遠最大のライバルが。
単純にハリウッド版とどちらが面白かったかと問われたら、それはハリウッド版。
だって当然。ハリウッド版はゴジラのカッコよさを最大限に活かしたエンターテイメントだったのだから。
日本でゴジラを、殊に日本と対するゴジラを描くとなれば、単純なものにはいかなくなる。
唯一の被曝国である日本。
放射能の落とし子であるゴジラ。
切っても切り離せない、暗く重く背負った過去。
日本もゴジラも決してその過去を忘れない。
平和ボケ。
復興の遅れ。
脆く、問題山積みの今の日本。
そこに現れたゴジラ。
日本という国を崩壊させる為だけに現れたとは思えない。
戦後の焼け野原から日本は発展した。
まだ深く残る震災と原発事故からも日本はきっと復興出来ると信じている。
今の日本が直面する危機であり、日本人が乗り越えるべきもの。
この苦境を乗り越えてゆけ。
今、日本にゴジラが現れた意味…
日本人にそれらを気付かせる為、忘れさせない為、荒ぶる神は再び現れた。
地蔵菩薩さん
コメントありがとうございます♪
すっかり庵野&樋口コンビによる“シン・シリーズ”定着しそうですね。
自分も『ゴジラvsコング』より、日本で『ゴジラ対ガメラ』を期待します!
怪獣映画ファンの永遠の夢なので、実現して欲しいような、夢のままであって欲しいような…。
自分は“シン・シリーズ”だったら、『シン・仮面ライダー』なんか見たいですね。
シリアスでリアルな日本版『ダークナイト』のようなヒーロー映画を!
近大氏🙇シン・シリーズ期待してます。
レビューにも書きましたが、大学時代に庵野さんの自主製作「帰って来たウルトラマン」観てました…その後にダイコンプロの「ヤマタノオロチの逆襲」?…だったと思いますが…素人が撮ったとは思えない出来にひっくり返りました。
Syu氏のコメントにも書いたんですが、庵野&樋口で「ゴジラ対ガメラ」 無理じゃない様な気がします。個人的には「ゴジラ対コング」 より、そっちのが観たいのですよ。
ご存知と思いますが、ビデオオリジナルでDVDにもなった「ウルトラマン対仮面ライダー」 …今DVD借りてます(笑)…藤岡さんと黒部さんが握手してる写真見て、すぐ棚から取りました(笑)…ゴジラとガメラもこんな感じでやれないもんすかね?…
自分も怪獣ものは好きなんですが、いや、このレビューには、やられました!
これぞ、怪獣愛、ゴジラ愛ですね。読んでいて興奮しました。ありがとうございました。
自分も、「シン・ウルトラマン」楽しみです!
近大さん、コメントありがとうございます。追記に気付いて下さってめちゃくちゃ嬉しいです!
「シン・ウルトラマン」には期待しかないです。絶対面白いに決まってますよね!(笑)
庵野秀明監督にしてみたら、ウルトラマンが全ての原点というのは有名な話ですし、学生時代に「帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令」というのも製作していますし、自らの原点をブラッシュアップさせるというのは感慨無量なところもあるんじゃないかなと想像しています。
“シン・特撮シリーズ”―僕も思わずそれを妄想してしまいました!(笑) 庵野秀明×樋口真嗣のタッグならばどんな作品でも素晴らしくして下さるはず! 僕も「シン・ガメラ」は観てみたいです。(笑)
近大さん
遅ればせながら本日観てきました。
近大さんのレビューゴジラ愛があふれていて
興奮の度合いがよくわかります。
私はと言うと少し時間置いてレビュー書きます。
なんせ情報量多かった~。
近大さん、返信ありがとうございました!
いやホント仰る通り、スゲーゴジラでした。
続編にせよ完全新作にせよ、ここから作るとなると
とてつもなく高いハードル越えなきゃいけませんね。
勿論、ハリウッドも含めて。
今後色んな案が出るのでしょう。その中できっと
放射能を浴びたカブトムシが異常進化する案も……
あ、うん、絶対無いっすね(爆)。
とにもかくにも、非難を恐れず「今のゴジラ」を
スクリーンに叩き付けた監督はじめスタッフには
敬意を払わずにはいられません。
なんか今年の鑑賞意欲をすべて消化された気分で
若干燃え尽き気味なのですが……また次回の
レビューでお会いしましょう。それでは!
近大さん、
毎度お邪魔します、浮遊きびなごです。
待っておりましたよ貴公のレビューを……。
庵野&樋口監督+尾上特技監督という布陣には
正直、期待3割 不安7割くらいだったんですが、
自分の中ではもうジャンピング土下座で謝りたいくらいに
完膚無きまでのゴジラ映画・エンタメ映画でした。
人によってゴジラへ抱く印象は異なると思いますが、
近大さんも同じように楽しまれたようで何よりです。
批判の声もあるようですが、初代とも『vsギドラ』とも
異なるゴジラの生態を一から創造し直したというのは
相当な覚悟と発想の転換が必要だったと思いますし、
怪獣映画としても誰も観たことのないタイプだと思います。
それに“アレ”は……ホントに泣きたくなるほど
恐ろしかった。ていうか自分、ちょっと泣きました、
あまりに怖くて惨くて。
それにしてもエンドロールで流れるのは
どうしてあの作品だったんでしょうかねえ。
人類の技術の粋を結集した兵器だったからなのか、
それともスタッフの誰かが思い入れのある作品なのか。
現代日本が危機に晒された時にどんな事が起きるか?
非難や風刺ばかりでなくポジティヴな描写も多く、
その点も見事でしたね。
僕は見終わってから前向きな気持で満ち満ちてました。
まだ頑張れる。そんな希望を貰えた気がします。
未だに余韻が残っていますよ。ていうか先ほど
2度目を観たばかりだから当たり前なんですが(笑)。
毎度の長文失礼しました。
返信お気になさらず、ではでは!