「生物専門家の監修入れたらもっと良かった」シン・ゴジラ SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
生物専門家の監修入れたらもっと良かった
賛否両論で、どちらの意見も納得できるが、少なくとも自分は驚かされたし、面白かった。
不満な点がないわけではない。
ゴジラの生態や倒す方法について、早口で話してたんでよく理解できなかったんだが、納得感はうすい。
はじめは血液を凝固させることで、原子炉でいう冷却剤を固まらせるのをねらって、メルトダウンをおこさせるのかと思っていたが、ゴジラの最後を見ると、熱暴走してるんじゃなくて石みたいに固まってたんで、なんで?って思った。
また、血液凝固材のはずなのに、倒れたゴジラの口にだらだら入れるだけでは、血流に入らないのでは…?
普通に考えたら、ゴジラが自発的に飲むでもしないかぎり凝固剤は体内に入らないので、あふれたぶんの凝固剤が地面にこぼれるだけになるんじゃ?
身体全身が石みたいになるのはいったいどんな作用? 仮に血流にのって凝固剤が全身に行き渡ったとして、表皮の殻みたいなとこまでは届かないんじゃ?
ゴジラ誕生の過程とか、博士との関係とかも、なんか早口でよくわからなかった。
ゴジラがポケモンみたいに一個体で進化することについて(ていうか、これ普通は変態っていうんじゃないかな)、もう少し専門家の人たちにつっこんでほしかったな…。現代の生物学の常識を超えてる、ありえない、でも、事実としてあるから認めざるをえない、くらいの反応であってほしかった。
海外のSFだと、実際に専門家が監修してるもんだと思うけど、シンゴジラに関しては少なくとも生物の専門家は監修にかんでないと思う。
だって、極限環境微生物の分子構造なんて、トンチンカンな言葉が出てくるんだもん。微生物は分子じゃあらへんよ。
極限環境微生物の、熱耐性機能を持つタンパク質の分子構造、とかだったらまだわかるけど。
あと、ゴジラの目的が不明。何がしたかったんか? べつに生物の行動なんだから、分かんなくても問題ないんだけど、専門家たちがその推測をしようともしてないのは不自然。
第一段階から最終段階まで、増えた質量は何から得てるのかも説明されてたのかな? エネルギーの説明はしてたと思うけど、質量の由来とか、ゴジラの組織の組成とかの話ってしてなかったんじゃ?
ゲノムの長さが人間の4倍(?)だから、人間を超えてるとか、生物の中で頂点に位置するとか、変なセリフもあった気が…。ゲノムが人間よりも多い生物なんて、植物とかで超ザラにあるんだが…。
重箱のスミつついてケチつけてるわけじゃなくて、単に生物の専門家に脚本や設定を協力してもらえれば、もう少しリアリティのある説明の仕方にできたのに、って思った。
でも、はじめに出てきた生物の大御所3人がそろって役立たずだったのは、3.11のときの放射線の健康被害をはっきり言えなかったことを皮肉ってるんだろうな。
悪い点だけ先に書いちゃったけど、結論としてはこの映画は超面白かった。
前半は、実際に怪獣が現れたら、政府はどう対応するのか、できるのか、というシミュレーションを見るような面白さがある。
後半は、ゴジラのCGの造形や破壊シーンの迫力を堪能できる。
海外カタストロフものと違って、ぐるんぐるんまわる視点とか、演出しすぎる映像、わざとらしく二転三転する展開がないのが、自分の好みにあっていた。
余計な恋愛要素や人情ドラマがない点も良い。
音楽や作戦がエヴァそのものやん、とか、石原さとみがぶっこんでくれるなー、とかあったが、この辺はむしろ楽しんで観れた。
これから日本(世界)は、ゴジラとの共存を考えていかねばならない世界になった、みたいなセリフは、福島原発の事故処理のことを言ってるんだろう。
もっと広く言えば、原子力発電や、科学技術そのもののことを言ってるのかもしれない。
ゴジラは災厄でもあり、福音でもある、みたいなセリフもあった。
最後の尻尾のシーンは思わせぶり。
ゴジラの正体は、人の怨念の集合だった、というオチにも見えるし、ゴジラがさらなる進化を求めて、自分を倒した「人間」に進化しようとしている、とも見える。
まあともかく、この映画は観るべき。日本のSF映画の最高峰といっていいと思う。
ヤシオリ作戦で極限環境微生物の酵素を使った、というのは、僕が映画の会話についていけなかったんでよく聞き取れなかったんで、ほんとかどうかわかりませんが、酵素を大量生産する手段はあるので、できなくはないと思います。
方法は、大腸菌発現系とか無細胞系発現系というものがあって、要は酵素の設計図にあたるDNA配列さえあればいいということです。
ただ、いくらその方法でも、何百万トンも生産するのはさすがに無理があるかもですが…。それに、そういった方法で作る、という描写もなかった気がします。
未知物質の放射線の半減期が短いのは、東京の復興の可能性を示す意味と、これが兵器として使える、ということの二重の意味があると思います。
3度目に鑑賞した際、極限環境微生物のくだりに私もようやく「おかしいかな?」と引っかかってしまいました。
『ヤシオリ作戦』では『血液凝固剤』と『細胞膜分解酵素(?)』の2種類の試薬を使ったと解釈しました。核攻撃まで時間が無い中、当該微生物から得られる酵素(?)を単離するのか。でも生産元の微生物はどこから捕まえてくるんだろうと、分からないなりに考えを巡らせていました。
ただ、関東化学さんをはじめ現場の方々がきっとなんとか帳尻を合わせてくれているハズなので心配していません (笑)
またゴジラの新元素の半減期については、科学的な考証よりも、込められたメッセージが気になるところです。
4回目、行っちゃおうかな……