「上映後、拍手が起こりました」シン・ゴジラ campomaggiさんの映画レビュー(感想・評価)
上映後、拍手が起こりました
ゴジラという未曾有の危機に際し、この国はどう動けるのか。日本という国や行政という組織を動かすのは人であり、その人を動かすのは強い意志である事を強く感じる映画だ。
圧倒的な力の前に、なすすべも無く蹂躙される東京は、観ていて悲壮感を持つ。ゴジラを排除する為に、欧米中露が核という一つの答えを示すのに対し、被爆国として最後まで抗い、別の解決法を追求する日本の姿は泥臭さを感じるものの、現代国際情勢において日本がどう生き残るのかという問いに対するヒントを示している様に感じた。東京駅での決戦は、華やかさが無いとの批判もあるようだが、むしろそれで良いのではと思う。これが日本のやり方なのだ。
また、戦後の日本の独特な立場や戦前から変わらない、加えて戦後に醸成された日本人の良さや誇りを、庵野監督らしい表現で見せてくれたと思う。
その一端が、『礼はいりません、仕事ですから』だ。劇場では笑いが起こったが、私はシビれた。皮肉とも取れるが、まさに日本人の、サムライの精神だろう。劇中、随所に皮肉というか、笑いを誘うシーンがあるが、庵野監督は批判的というより愛情を持って表現しているのではと感じた。
怪獣映画として期待していた人はがっかりしたかもしれないが、この国と、この国に住む人の課題を浮かび上がらせた良作だと思う。CGは粗がある。そこはハリウッドには勝てない。だが、誇りを持って良い。胸を張って世界に示せる作品だ。
付言したい部分として、
中央官庁前で群衆デモの騒音が必死の危機対応をしている人々の邪魔となるシーンは、国会前の戦争反対デモを彷彿とさせた。あのデモは戦争反対という目的はあるが、この国を守る、この国の人々を守るという強い意志が感じられない事と共通点があったように思えた。日本の反戦老人、そして若者しっかりしろ!!