「ト書きのような世界観」バケモノの子 REXさんの映画レビュー(感想・評価)
ト書きのような世界観
ところどころ唐突かつ強引な場面が多く、それにより全体的に説教くさくなってしまった。
なんでしょう、監督の中では消化しているのだろうけど、具体性のないト書きのような世界観の提示。
リリー・フランキーと大泉洋のキャラはアクション漫画で出てくる「説明キャラ」で、脇役としていたほうがいいのだが、いてもいなくてもいいような存在に落ちぶれている。
展開が早いのは映画の作りとしては問題とする点ではないのだが、九太が突然勉強に目覚めたり、楓が一郎彦に説教たれる場面。
前者は九太の心の縁に人間界への郷愁が表される場面がチラリともなかったし、後者は一度も会ったことがないあなたに、一郎彦の何がわかるの?と言いたくなる。
人間界とバケモノ界をつなぐ道が簡単に行き来できるのは、犬夜叉やハリポタなどもそうだし、まあいいのだが…この作品に関しては、それにより九太が「どちらの世界を選ぶのか」という葛藤が曖昧になってしまった。
一見優等生に見える一郎彦。正体を誤魔化され続けたことで、知らず知らずのうちに劣等感を宿してしまったという少年の気持ちはわかるが、ダークサイドに落ちた時のあの威力は凄すぎませんか(笑)。
その前に、あの300円ショップで売っていそうな被り物はないでしょう(笑)。登場した瞬間に、人間だとすぐにわかってしまいました。いくらアニメが子ども向けとはいえ、子どもでもわかるんじゃないだろうか…。
そもそも、「人間は闇を宿す」とバケモノ界でさんざん警戒されているにも関わらず、熊徹は何が目的で人間界にきていたのだろう。人間界で弟子を探すこと自体が、おかしくないですか。
たとえば人間界にも九太の逆のような「はぐれバケモノ」なるものがいて、バケモノ界で弟子が見つからない熊徹がそれを探しにきたのならわかりますが、一郎彦を見つけた猪王山も何のために来てたのか?
熊徹が九十九神に転生して、九太の闇を埋めるっていうアイデアは、抽象的ながらも胸を衝く展開でしたが、いかんせん全体が…荒いというよりも浅かった。
九太に寄り添うネズミのような化け物とか、闇を宿すという台詞とか、ありふれた設定なのですが、どうしてもジブリやSTAR WARSを連想させられて、既存の作品を掻い摘まんで繋げたような既視感を拭えませんでした…。
それはそうと、本当のバケモノは人間、というオチですが、バケモノはダークサイドに堕ちないんですかね。