劇場公開日 2015年7月11日

  • 予告編を見る

バケモノの子 : インタビュー

2015年7月10日更新
画像1

染谷将太&広瀬すず、成長の“のびしろ”は無限大

日本映画の最前線で疾走を続ける染谷将太。目覚ましい躍進を遂げ続ける広瀬すず。将来を担うふたつの才能が、アニメ映画「バケモノの子」で新たな輝きを放った。共に本格的な声優は初挑戦ながら、細田守監督が構築した壮大な世界に生きるキャラクターにみずみずしい命を吹き込んだ。またひとつ可能性を広げた2人。成長の“のびしろ”は無限大だ。(取材・文/鈴木元、写真/江藤海彦)

画像2

強烈なインパクトのあるタイトルである。一見しただけでは内容などの詳細を想像するのは難しい。2人にとっても同様だったようだ。

染谷「何かバケモノが出てくるんだろうなって。細田さんらしいタイトルだなと勝手に思ったんですけれど、こういう設定だったとは思ってもみなかったですね」
 広瀬「バケモノって実写ではCGになっちゃうから、アニメだからこそできる世界観なんだろうなとは思いました。でも、バケモノがメインなのかバケモノの子がメインなのかよく分からなくなっちゃって、どういうお話なのか単純に気になりました」

人間界とバケモノの世界が林立する世界。母親を亡くし独りぼっちになった少年は、生きる強さを身に付けるためバケモノの世界・渋天街(じゅうてんがい)で暮らす熊徹に弟子入りする。九太という新たな名前を受け、短絡的な熊徹とぶつかり合いながらも徐々に心を通わせ心身ともに成長。17歳になり人間界と行き来できるようになった九太は高校生の楓と出会い、自らが生きるべき世界を模索し始める。

染谷は、青年になった九太役。細田監督の前作「おおかみこどもの雨と雪」のオーディションを受け見初められたが、見合った役がなく端役で出演。あらためてのラブコールとなる。

画像3

「また一緒にやりましょうとおっしゃってくださっていて、本当に声をかけていただけたので、うれしかったですね。九太に関しては男の子らしい腕白さや純粋たるがゆえのひねくれ方は誰もが持っているものなので、そこは大切にしようと思いました。細田さんは、青年期は人間界と渋天街を行ったり来たりするのでそのギャップというか、どちらかといえば人間界の方が生きづらくなっているのでその繊細さを出してほしいと」

九太の少年期を担当したのは宮崎あおい。声変わりを考慮しても違和感がありそうなものだが、これが実に自然な形で引き継がれている。事前に収録された宮崎の声を聞いてからアフレコに臨めたことが奏功した。

「しっかりと声優をやらせていただくのは初めてなので、技術もないですし、どういうふうにやったらこの映画のためになるのかと思っていたんです。宮崎さんが吹き込んだ声を聞いて素晴らしいなと、九太としての影響を受けたんですよね。九太が成長していくさまを見守れたうえでできたので、いい意味で気にせずというか、その時その時の九太をやっていけたらいいなと思えました」

一方の広瀬は、声優自体が初挑戦。初主演の連続ドラマ「学校のカイダン」が細田監督の目に留まったそうだが、九太とのシーンがほとんどとはいえ配役を見る限りプレッシャーを感じるのも無理はない。熊徹の役所広司をはじめ渋天街は大泉洋、リリー・フランキー、津川雅彦らそうそうたる顔ぶれである。

画像4

「監督と初めてお会いした時に、ドラマのキャラクターとは全然違うけれど広瀬さんそのままでいいです、期待しているんでと言ってくださって…。台本を頂いてキャストの皆さんを見たら、とても豪華な方々ばかりだったので…なんで私?って思いました」

アフレコは順撮りで、各シーンに登場する全キャストが一緒に行うのが細田流。特に染谷は役所やベテランの先輩たちと対じすることが多く、なかなかにしびれる状況が目に浮かぶ。

「すごかったですよ。今までと違う緊張感を味わいましたね。実写のアフレコは自分のリズムでできますけれど、決められたリズムでお芝居をしなければいけないので難しかった。自分のことでいっぱいいっぱいでしたけれど、役所さんは熊徹として大きな力強いエネルギーを発していたのでそれに乗せられたといいますか、こっちもその分返せるじゃないですか。そういうやり取りでしたね」

画像5

広瀬も同様に、本読みの段階では心配になったそうで、セリフ量の多さにも苦戦したが、細田監督のサポートもあり徐々にペースをつかんでいったという。

「1回にしゃべる量が多くて全部を聞かせたい、届けたいと思っても尺が短くていつもちょっと遅れちゃったりしていました。映像で口が開いている時に合わせてしゃべるって、新鮮でもあったけれど慣れなくて難しいなって思いました。でも、完全にはまった時のそう快感がすごくて楽しくなって、どれだけ表現できるかなってずっと考えていました」

共に苦労や反省はありつつも、日本アニメ史、いや日本映画史に残る希有(けう)な“ホームドラマ”の傑作の誕生に寄与できたことを素直に喜ぶ。

染谷「心を躍らされるというか、全身が踊らされますね。感動もしますし、ずっと色あせない素晴らしい作品を細田さんがまた作り上げたなって思いました」
 広瀬「アフレコの期間にアニメの魅力をいい意味で見せつけられたというか、逆に今までなぜ見てこなかったんだろうと思うくらい、伝わってくるものや表情で感じるものがすごい作品だなあって思いました」

染谷は「もともと映画を作りたい人」だったそうだが、昨今の進境は著しい。今年に入ってからだけでも「さよなら歌舞伎町」「寄生獣 完結編」の主演作を含め4本が公開され、今後も「みんな!エスパーだよ!」など公開作がめじろ押し。今年元日には女優の菊地凛子との結婚も発表し、公私ともに充実一途だ。

画像6

「雇われの身なので、本当にタイミングだと思います。もちろん(出演オファーが)かぶってしまったこともありますし、ポンと空く時もあるので。年齢のこともあるのかもしれないし、きっとどんどん変わっていくんでしょうね。やはり全体的に責任も増したと思いますね」

対する広瀬は、公開中の是枝裕和監督の「海街diary」で鮮烈な印象を残したのは記憶に新しいところ。「ちはやふる」2部作での映画初主演も決まり、さらなる飛躍が期待される。

「お会いしたことのない方にも、『ドラマを見ていたよ』、『映画良かったよ』と言ってもらえることが多くなって不思議な感覚です。すごく幸せだなって思います。だけど、あまり自分自身が今の状況についていけてないこともあるので…。でも、声のお仕事って今までやったことがなかったから、ひとつ世界が広がったなって思います」

2人はソフトバンクモバイルのCMで若かりし白戸家のお父さんとお母さんを演じ、「バケモノの子」が2度目の共演となる。次は同じ実写のスクリーンで相対する姿を見てみたい。いや、今後の日本映画のためにも1日も早く実現することを願う。

「バケモノの子」の作品トップへ