アメリカン・ドリーマー 理想の代償のレビュー・感想・評価
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映画のカタルシスを感じる
上手い役者・良い脚本・センスのある監督・巧みな編集…がひとつになるとこういう作品になるのではないか。ストーリー自体は特別なものではない。むしろ地味。大どんでん返しがあるわけでもない。でも最後までずっとひきつけられた。この監督の次回作が楽しみである。
こういう映画らしい映画がもっと観たい。
なかなか東京まで行けないので、郊外のシネコンにこのような良質な映画がもっと来てほしい。
大衆向きだけが映画ではないのだ!
理想を侵食する現実の怖さを体感
スペイン系の移民の男が才覚と真っ当な営業で石油ビジネスで財を成すのだが、さらなる成長を目論み、マンハッタンの対岸の石油備蓄施設の買収に動く。ここから、少しずつ歯車が狂い始める。
映画は終始緊迫感あふれる映像で、主人公の危機回避の行動を追い続ける。我々は男の一挙手一投足を、固唾を飲んで見守るだけだ。
主人公のモットーは法を犯さないこと、暴力の力を借りないこと。ところが、業界仲間の嫉妬や一攫千金を狙うチンピラが法の一線を超えてまとわりついてくる。
もっとも危険な年と言われた1981年のニューヨークは毎日のように銃撃事件が続く危険な街だ。主人公の理想は現実に侵食され見分けが付かなくなる。
結末は書かないが、理想を質に入れてアメリカンドリームを追い続ける主人公の姿が愛おしくも思える。
雪に閉ざされたニューヨークは荒涼としているが、情感を湛えてとてもいい。
アメリカ映画も深い。
Most Violent
原題は A Most Violent Year である。原題のとおり、カーラジオから流れるニュースではいつも銃撃事件を伝えている。時代は1981年か82年。治安が悪く暴力事件が蔓延していた時代のニューヨークが舞台だ。かといって、ギャング映画のように銃による打ち合いや殺し合いのシーンが描かれるわけではない。しかし、映画は観客に常に暴力や血の匂いを感じさせる。流血シーンだけが暴力の恐怖を観客に伝えるものではないということがこの映画を見るとよくわかる。直接的な暴力描写はほとんどないが、その恐怖に対する緊迫感は常に観客に伝わってくるのだ。
映画は経済の物語だ。クリーンなビジネスで燃油業界をのし上がってきたヒスパニック系の移民のアベルは美人の妻をめとり自信満々のように見える。しかし、同業者らしき者たちからの嫌がらせはずっと続いている。アベルの会社の燃油運搬トラックが次々と襲われ油が奪われる。家族や従業員への脅迫や暴力もある。従業員に銃を持たせる提案も持ちかけられるが、アベルは従業員や家族が銃を持つことを徹底して嫌っている。もちろん、ビジネスに対する姿勢も一貫してクリーンなものを目指している。しかし、彼の会社には検事の疑惑がかかり、脱税や違法なビジネスに対する嫌疑で調査が続けられているのだ。そして、やがてそれらは大きなトラブルに発展していくのだが・・・。
画面は常に緊迫感を帯びており、重厚で目が離せない。暴力が表立って描かれることは少ないが、その気配は常に濃厚で、まさに violent year である。画面は寄りのカットが多く、引いた画面は少ない。つまり観客には目の前の物事だけが見え、全体は見えない。見えないところから恐怖は来る。音楽も少なめで静かなシーンが多い。そしてそこに突然予期せぬ音が入ってくる。見えないところから何かが飛び出してくる。しずかなところに突然の物音。観客は常に緊迫と衝撃にさらされている。2時間余りの上映中、だれるシーンが全くなく、最初から最後まで緊張を引っ張っている素晴らしい演出だ。
日本語のタイトルは「アメリカン・ドリーマー 理想の代償」だ。クリーンなビジネスで移民からのし上がったアベルがアメリカン・ドリーマーで、そしてラストシーンが理想の代償なのだろうが、そういう見方以外の見方もできると思う。日本の上映会社が勝手に映画の解釈をタイトルに入れてしまっているよくない例だ。私は原題を知らずに見たが、冒頭、A Most Violent Year というタイトルの後に、ラジオから殺人事件のニュースが流れてきて、そこだけで映画の中に引き込まれてしまった。原題の方がはるかにいい。
オープニングのマーヴィンゲイが映画にピタリ
日経の映画評をいつも頼りにセレクトしています。期待以上、久々にこれ程渋さを感じる映画を観ました。クライムサスペンスやギャング抗争物とは一線を画し、一応(?)真っ当なビジネスを営む社長にこれでもかと災厄が訪れ、それを打ち返す様が圧巻。エンディングもヒネリが効いており◉、後味は良くないですが。
Oscar Isaacの切れ味と迫力
以前の「ギリシャに消えた嘘」の役もとても良かったですが、さらに彼の演技力に磨きがかかったような気がします。鋭さとかじわじわとした迫力みたいなものが。
妻役のJessica Chastain も高貴な感じが良く出ていてgood。
個人的には、久しぶりにパーフェクトな作品に出合えたような気がします。
強い男
派手な見せ場やお涙頂戴はないけれど、降りかかる災難に信念を貫き通し立ち向かおうとする主人公の姿を魅せる作品。
取り巻く環境や人間関係の設定がストーリーを牽制してハラハラドキドキ盛り上げる。
後半少し残念な展開があり大事なところだけに、あれ?っとなったけれど、マフィア映画ではないのにマフィア映画のような、古きよきカッコイイ「映画」という感じ。
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