「ヒリヒリするサスペンス」アメリカン・ドリーマー 理想の代償 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
ヒリヒリするサスペンス
「最も暴力的な年」という原題と、「アメリカン・ドリーマー/理想の代償」という邦題。
どちらがより作品を表しているか?と問われれば、原題の方が深みを感じてしまう。
主人公・アベルの窮地は1981年のニューヨークという背景抜きには語れない物語だ。
世界一の大都市・ニューヨークだが、はっきり言ってゴッサムシティみたいなものである。日本の現代人の感覚としては、都会と言って良いものか迷うレベルだ。
石油販売という生活に不可欠な分野で起業し、順調に財を成しながらもアベルの苦労は絶えない。全うに商売して、全うに成功したい。ただそれだけなのに信じられない横槍が入る上に、それが当然なのだから恐ろしい。
土地を購入するための借金に奔走し、輸送車の襲撃に頭を悩ませ、検察の捜査に翻弄される。
真綿で首を絞められるように、少しずつアベルを取り巻く環境は苦しくなる。観ていて「こうなったら最悪」と思う、その最悪のちょっと手前くらいの状況に追い込まれる。
そのヒリヒリ具合がたまらない。衝撃的な出来事はないが、いつも目が離せず気づけばのめり込むように観ている。そんな映画だ。
最初に原題と邦題を比べたが、やはり原題は素晴らしい。原題にふさわしい80年代の衣装や、地下鉄の汚れ具合も映画の雰囲気作りに一役買っていて素晴らしい。
だが、「アメリカン・ドリーマー/理想の代償」という邦題がついていなかったら観たかどうか怪しいのも事実だ。
この映画と出会わせてくれた邦題に感謝している。
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