劇場公開日 2015年10月1日

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「破滅のオイル」アメリカン・ドリーマー 理想の代償 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0破滅のオイル

2021年2月6日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

怖い

知的

オイルショック!
…なんて古い流行った言葉があるが、とてもとてもその一言では言い表せない。
オイル業界に挑んだ男が、あっという間に破滅の道へ…。

1981年。妻アナと共にNYへ渡った移民の実業家アベルは、オイル業界に参入する。クリーンなビジネスをモットーに、“アメリカン・ドリーム”を理想としてではなく、信じてーーー。

会社を立ち上げて早々、運転手襲撃。
さらに、脱税疑惑。家宅捜索。
家族への脅迫。
銀行からの融資拒否…。
不運が立て続けに続く。
しかもその間、僅か30日!
この業界に参戦した事が間違いだったのか…?
否。どんな仕事をしようと個人の自由。
不条理なのは、思惑蠢くその業界。
理想を信じれば信じるほど、クリーンであればあるほど、翻弄され、飲み込まれる。
宇宙を駆けるエースパイロットではなく地を這いずり回る苦悩を、オスカー・アイザックが熱演。

普通こういう場合、妻がどんな時も支える。
挫けないで。諦めないで。
しかし、本作は違う。言ってみれば、強妻もしくは悪妻。
夫がクリーンならば、成功する為には夫にも内緒で非情な手も使う。
家族に害が及んだ時、銃を購入する。
自分が守ると反対する夫に言い返すアナ。自分の身は自分で守る。
ジェシカ・チャスティンは本当に強い女性が似合う。

J・C・チャンダーは社会派の才人。
確かに見応えはあるが、好みは分かれるかも。
『マージン・コール』も『オール・イズ・ロスト』もそうだった。

私財を投げ売ってまで挑んだビジネス。
その夢が、脆くも…。
妻との関係も…。
クリーンをモットーにしていた男が選んだ道は、あまりにも皮肉。

邦題は主人公アベルを表したようなタイトル。
原題は“最も激しい年”。
どちらも合っている。

オイルという夢でアメリカン・ドリームを目指した男が行き着いたのは、激しく、皮肉的な…。

近大