「1,000ユーロ=凡そ14万円」サンドラの週末 だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
1,000ユーロ=凡そ14万円
サンドラがこぼした涙より、映画を観ていた私がこぼした涙のほうが、多分多かったくらい、目から水が流れ出て大変でした。
相手にとって何の得もないことを、お願いして回るストレスたるや、という想像と、
自分の収入・生活を守るために、同僚を切り捨てるストレスも大きいだろうな、という想像と、
そんな中で、ボーナスよりも同僚を選んでくれた賛同者の思いを想像し、ほとんどずっと泣きながら見ていました。
サンドラの夫は素敵な人だね。仲良くやりなね。
うつ病のつらさ、どういう症状で苦しむのかについて、いくつかの物語で触れてはいるけれど、やっぱりわたしにはよくわかってない。
でも症状は回復してやっと復職できると思った矢先に、解雇が決まったっていわれたら、ブロザックのんじゃうのも分からなくはない。鑑賞前に、サンドラがうじうじしていていらつくと聞いていて、そう思えたらいやだなと思っていたけど、わたしは全く気にならなかった。というか、うじうじしながらよく頑張ったと思う。
サンドラの復職かボーナスのどちらかを選べという選択を同僚にさせた社長がよくないけど、経営者としての苦悩もあるでしょう。休職中に16人で回せることが分かったのに、復職させるメリットないでしょと言った同僚がいましたが、それも正論です。17人で余裕をもって回すよりも、残業代を貰いながら16人で回す方を選びたい同僚の気持ちも分かります。社長と主任がまあ悪者といえばそうですが、べつに彼らがとても間違っているとも思えない。それはサンドラも分かっていたと思います。
世界は自分にいつでもフェアではない。だから理不尽は起きる。現在のこの地域(フランスでいいのですよね?)の経済状況では珍しくないこと。では、その理不尽が降りかかってきたときにあなたはどうするのか。
その問いに、サンドラがどう立ち向かったかということがテーマなのだと思います。
彼女は自分の主張をしました。うじうじしながら、励ましてもらいながら、負け戦かもしれないけど自分の主張をしました。
結果、負けましたが善戦しました。
うなだれて帰ろうとするサンドラに、社長はボーナスも払うし、サンドラも復職させるといいました。
その詳細は、代わりに正社員じゃない2名を契約期間が来たら更新せず、サンドラを復職させる、というプランでした。その契約更新してもらえないうちの一人はサンドラに賛成票を投じてくれた(おそらく移民の)若者でした。
サンドラは、その申し出を断りました。誰かの失業と引き換えならば復職しなくてよいと。そして毅然と帰って行ったのでした。
おそらく、自分のためにボーナスをあきらめてくれた彼を失業させたくなかったのだと思います。
サンドラの最後の選択の良し悪しを判断することはしません。
ただ、彼女は全然後悔しないだろうなと思いました。その姿に私は感動しました。