「資本の配分」サンドラの週末 ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
資本の配分
サンドラの復職の代わりにボーナス無しか、いやサンドラを解雇してボーナスを貰うか、二者択一。迷いますよね、迷います。
サンドラというある一人の女性を通して、ダルデンヌ兄弟が私達観客に投げかけたこの問いに正解はありません。可哀想だし同情はできるけれど、やっぱりお金は大事ですもんね。
しかし、サンドラの問題は働く者である以上、避けては通れません。「私は優秀だから大丈夫」「私は病気にはならない」とどれほど多くの人が言えるのでしょうか。サンドラにならない保証は実はどこにもないのかもしれません。
日本でも「貧困」が特別なことではなくなっています。原因の一つに低賃金も含まれます。オランダでは賃金の分配に対する一つの解決策として「ワークシェアリング」が導入されていますが、この作品も「ワークシェアリング」を連想させます。
そしてもっと掘り下げれば、賃金だけにとどまらない「雇われる私」に気がつきます。私がサンドラに一票を投じるということは、私がリストラされそうな時へのリスクヘッジになるとも言えます。
さらに、雇用形態や賃金が「民主主義」に大きく関わっていることにも気がつきます。私が臨時雇用で明日にも首になりそうな場合には、私の意見ではなく得にもならない他の人の意見を優先せざるを得ないことがあるかもしれません。自分の投票行動に正当性を持たせることができなくなるかもしれません。
ダルデンヌ兄弟が私達観客に投げかけた根本的な「問い」はここにあると思います。
そして、ダルデンヌ兄弟は非難されて落ちこんだりしながらも、それでも諦めないサンドラという等身大の女性を主人公に選びました。
さらに、ラストではサンドラにある決断をさせました。ダルデンヌ兄弟が私達の生きる社会に対して出した「答え」がサンドラなのです。