怒りのレビュー・感想・評価
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期待したのに
無垢で気立ての良い女の子。
酷い目に遭った可哀想な女の子。
男たちに歯向かわない、守ってあげたくなる女の子。
しっかり者の一児の母。
にっこり微笑む病床の母。
施設育ちの賢そうな女の子。
麦茶をお盆に載せる気配りの主婦。
みんな健気で素直な、可憐な乙女。
男の理想には付き合っていられません。いい加減にしてほしい。
背後にある社会問題や、人間の不寛容さや脆弱さに深く切り込まず、ただ、“弱者は号泣という形でしか怒りを表せません”ということを描写している。
レイプされた少女は犯罪被害者だ。“可哀想な女の子”っていう立ち位置に違和感マックス。
被害者や弱者は号泣して諦めろっていうプロパガンダのよう。
俳優の熱演は素晴らしいけど、そこに頼っただけの映画だった。
誰に?何に?向けられた【怒り】なのか?
東京八王子で夫婦惨殺事件があった。
現場に残された被害者の血で書かれた【怒り】の文字の意味?
事件から一年後、
千葉県房総、
沖縄の離島、
東京都内、
3人の正体不明な男たちが現れる。
そして彼らが様々な登場人物と関わり映画が進んでいく。
カメラの切り替えが速く、頻繁に3つの場所は変わる。
話は少しづつ小出しにされて重層的な物語が少しづつ進み
解きほぐされて行く。
八王子の殺人事件の犯人・山神に似た3人の男。
田中に扮する森山未來、
田代を松山ケンイチ、
大西を綾野剛が
それぞれ演じている。
3人の正体不明の男の周辺にいる人々。
森山未來と仲良くなる少女に広瀬すず、
松山ケンイチの雇い主の渡辺謙と恋人になる娘の宮崎あおい、
そして綾野剛のゲイの友人に妻夫木聡。
殺人犯を疑われる男より、疑われたことによって起こる周辺の人への波紋、
それが詳しく描写される。
「疑うこと」
「信じることの難しさ」
「真実を語っていても、疑われる」
一体、血文字の【怒り】の示す意味は?
私には【怒り】のより、人を信じることの難しさ、
【信頼】について描かれた映画に思える。
もしかしたら犯人は、自分に対して怒っている。
憤怒の矛先が【善良な主婦のくれた一杯の冷たい麦茶なら?】
あまりにも理不尽で性根の腐った犯人。
この映画で本当に怒っていいのは、米兵に暴行された泉ちゃんだけだ。
ラストで腑に落ち、救われる映画だった。
俳優陣は豪華、映画としては駄作
まず、構成として3つの短編映画を1つの映画にまとめたような構成となっています。
で、長尺の映画なんですが、3つのストーリーそれぞれを1つの短編映画として見ると、時間不足のためもあるのでしょうが、ストーリーに深みがなく、どれも面白くないです。
さらに、たちの悪いことに、ストーリーに深みがないのに、無駄に過激なシーンを入れ込んであり、メッセージ性の薄い、ただ不快感を与える(一部の人は喜ぶかもしれませんが)、映画となってしまっています。
で、構成上、この映画の楽しみ方のポイントは、3つの短編映画を同時進行的に見ながら、誰が犯人かな?、と犯人探しをしながら観客がみれる、ということになるのですが、ミスリード誘導に頼り過ぎな上に、あっけない結末で、ミステリ的な仕掛けも稚拙です。
なので、駄作です。
俳優陣は豪華ですが、金出せば良い映画になるわけじゃない、という見本のような映画だと思いました。
んー、なんだろう、わかるんだけども…
惹き込まれた
意欲的で重厚な人間ドラマだが・・・・・
本作は、東京の郊外で発生した夫婦殺人事件の容疑者として浮上した、東京、千葉、沖縄在住の3人容疑者を巡る3つの物語を同時進行させるという斬新な手法で、真犯人探しというよりは、容疑者を通して、人を信じることの難しさ、危うさを問う重厚な人間ドラマである。
3つの物語は、夫々、特徴があり、それなりに面白いが、互いの関連性はなく独立している。故に、同時進行の仕方に苦戦している。作り手は作品コンセプトに基づいて、やっているのだろうが、残念ながら、なんの脈略もなく物語が次々に切り替わっていくので、夫々の物語が途切れ途切れになり、密度が薄まって、散漫になっている感が強い。夫々の物語の完成度にもバラツキがある。
最も完成度が高いのは、千葉編だろう。容疑者(松山ケンイチ)をアルバイトとして雇っている男(渡辺謙)の長女(宮崎あおい)が東京で傷付いて帰省し、容疑者と次第に親密になり、同棲を始めるが・・・。容疑者の潔白を懸命に信じようとする長女、長女の幸せを願う父親の心情には自然に感情移入ができ、胸を打つ。宮崎あおいは、今までにない役処ではあるが、新境地を開いた感のある出色の演技で、傷心の長女の心情を見事に演じている。渡辺謙も流石の演技で、父親として、長女の幸せを祈りながらも、容疑者を信じる気持ちの揺れを見事に演じている。松山ケンイチの表情、特に目の演技も素晴らしい。過去を背負ってワケありで生きていることを眼付だけで演じている。怪しさ、不気味さ十分である。短編作品として成り立つレベルの完成度である。
それに対して、東京編では、容疑者(綾野剛)と優馬(妻夫木聡)との関係性が主題であるような物語になっている。綾野剛は容疑者というよりは不遇な人生を暗示させる演技に終始している。真犯人ではないかという怪しさ、不気味さ、怒りというよりは、不遇であるが故の優しさが目立つ。沖縄編では、基地があるが故の沖縄の悲劇による人間の怒りがクローズアップされている。しかし、肝心の容疑者(森山未來)は、得体の知れない不気味さは十分であるが、人間像が不透明過ぎで心情が見えない。演者の絶叫演技も気になって、感情移入できない。
東京編、千葉編、沖縄編の3つの物語を紡いで、人間を信じることの難しさ、危うさを炙り出そうとする作品の意図は理解できるし、俳優陣の演技も素晴らしかったが、3つの物語の同時進行という手法の難易度は予想以上に高く、未完の大器で終わってしまった。但し、無難な従来手法の繰り返しでは、映画は進化しない。今後も、斬新な手法の作品の登場を期待したい。
タイトルと内容・脚色に乖離が?
俳優陣の演技が光る至極の一本
吉田修一だけど原作未読のまま映画を先に観た。 すごくよく出来た映画...
不意に観る映画じゃなかった。
終盤30分切っても誰が犯人なのか分からない、俳優さんが皆んな豪華なので誰が犯人でもおかしくないとか、久しぶりに怖いと思いました。ラストの森山未來がお店や水槽を叩き割って屋根から飛んで逃走するシーン常軌を逸してて良かった。以上!
タイトルは『憎しみ』でも『憤り』でもなく、『怒り』
皆さんのレビューが素晴らしすぎて
こちらから言うことは何も無し。
これは映画、フィクションだって
何回も言い聞かせてようやく平常心を保つ。
絶望の中に例え一筋の光が差し込んでも
前を向いていなければその光は見える訳もなく
自力で見上げることができなくても
きっと導いてくれる人はいるはず
人の愚かさと愛おしさを思い出させてくれる
PG12でいいのかと思ってしまうほどの衝撃的な場面があります。
猟奇殺人がキーになっていますが、エログロを映像や音楽で煽っているわけではありません。
個人的には、宝石箱に大切にしまいたくなる、誰にも汚されたくない宝物のような恋人との営み。
そして真っ向勝負で現実から目をそらさずに描き切るあのシーン。目を覆いたくなりますが、役者の覚悟に、かえって目を背けたら失礼だと思わされるくらいの迫力がありました。
衝撃的な映画です。
心の中に殴り込まれたような気分になります。
受け止めるのに時間がかかります。一生受け止めきれないかもしれません。あのシーン、このシーン、後から何度も思い出してしまいます。
パンドラの箱を開けたようです。どこかに希望が…というのは、私の願望なのでしょうか。
答えを探してしまいます。でも、どこにも見つかりません。自分の外にも、内にも。何一つ確かなことはないのでしょう。そんないら立ちに、自分の心が浸食されていく感じ。自分は何を信じているのでしょうか、何を信じていないのでしょうか。…『怒り』すごいタイトルです。
絆。心地よい響きです。
災害の度にどこのだれかともわからない人がボランティアとしてやってくる。大抵は絆を感じられるもの。
その反面、それが簡単に揺さぶられる現実。すぐ足もとにあるブラックボックス。
愛する人が何者なのか知りたい。それはギリシャ神話のプシケが陥った罠。
愛するからこそ知りたい。イザナギの神や『鶴の恩返し』のよひょうが犯した罪。
神話時代から繰り返されてきた物語。
これだけ重い話なのに、最後まで引き込まれて鑑賞できたのは、役者の迫真の演技と見事な映像と音楽、そして編集の技のお陰です。
主演は謙さんとなっていますが、どの登場人物も主役です。
お一人お一人の具体的な場面を示して称賛を贈りたいですが、ネタばれになってしまうので割愛。どの方も役者の代替えが利かないほどの存在感があります。
少なくとも、森山さん、広瀬すずさん、綾野さん、妻夫木さん、宮崎さんにとっては代表作になるのではないでしょうか。
特に、森山さんの役作りは、一見理解不能で、でも最近良くいるタイプを演じていらして唸らされました。少なくても田中自身必死で、その時湧き上がる思いに正直で、自分に自分が振り回されて、でもどうにかしたくてもがいている様子に涙が出てきてしまいました。
監督が「世界中の人が敵になっても、その人物を愛してくれる人に演じてほしい」と仰ったそうですが、どの方々もそんな監督の要請に応えられていたと思います。
李監督作品は『フラガール』しか鑑賞していませんが、振り幅の大きい監督ですね。
と言っても『フラガール』でも、何気ないショットで、その方のこれまでとか、年齢とか心情を描き出す人物描写が素晴らしかったです。この映画ではもっとじっくり人物が描き込まれていて魅せてくれます。
そして、私がこの映画に希望を感じてしまうのも、『フラガール』に注いだような温かい視点を感じるからでしょうか。
『フラガール』では、関係者が御存命なためか、ちょっと演出過剰っぽいところもありましたが、この映画では、これでもかというほど、ごまかさないで、現実から逃げない真摯な態度を貫かれています。
だから、重い…。
映像は、土地ごとでテイストが違い、コラージュされていきます。なのに、混じりあってゴタゴタになるのでもなく、バラバラになるのでもなく、フーガのように、ハーモニーのように相乗効果が効いています。
千葉の素朴な画にほっこりし、東京の電飾にめまいを覚えたかと思うと、セピア調のロマンチックに酔いしれ、沖縄のつきぬけた海と空に大きく深呼吸したくなりました。途中までは…。
そして、それらのやるせない物語を包み込むような音楽。
見事。
これほどの映画をリアルタイムで鑑賞できたことに感謝します。
んー
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