怒りのレビュー・感想・評価
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千葉・東京・沖縄パートいずれも秀逸
李相日監督が、「悪人」に続き再び吉田修一原作を映画化。李監督にとって、吉田原作は親和性が高いのだろう。それを実証するかのごとく、今作もまた重厚な作品に仕上がった。
犯人未逮捕の殺人事件から1年後、千葉・東京・沖縄に前歴不詳の男が現れたことから巻き起こるドラマを描いている。千葉パートは渡辺謙、宮崎あおい、松山ケンイチ、東京パートは妻夫木聡と綾野剛、沖縄パートは広瀬すずと森山未來が担っているが、いずれも土地に根差した人間模様がえぐり出されており、人間の憎悪がどこに潜んでいるかが浮き彫りになってくる作りが秀逸だ。
原作との違い
原作が素晴らしかったので映画版である本作も視聴。
原作と映画版ではストーリーは概ね同じですが、映画化に合わせて内容が大幅に削られています。
なにせ500ページぐらいある小説をたった2時間の映画にしなければならないのです。しかも主人公が4人ぐらいいるストーリーをたった1つの映画にまとめないといけないのです。
そのため映画では説明不足で感動できるシーンもあまり感動できない人もいたのでは?
なぜなら映画版では一つ一つのストーリーを冷静になって考えると別に大したことをしてなかったりするからです。「借金取りがくるから逃げただけ」みたいな感じで。
でもちゃんと小説ではその辺は何百ページにも亘って丁寧に描かれているので、映画にピンとこなかった人は小説も読むことも推奨します。
…こう書くと映画が素晴らしくなかったかのように思えますが、映画はめちゃくちゃ素晴らしいです。あの長い原作をよくここまで綺麗にまとめたなあと感心します。
叫びたくなるほどの怒り
出演者の迫真の演技が凄まじい。
宮﨑あおいの号泣シーンやすずちゃんの悲惨なシーン、綾野剛の儚さや渡辺謙の存在感。
何より犯人の狂った感じが怖すぎる。
とにもかくにもキャストがものすごく豪華。
映画の構成もすごくて、とある殺人事件を軸に3つの物語が同時に進行していく。
観ている途中で、もしかして3つの物語は時系列が違うんじゃ…とか勘ぐってしまったけど、そんなことなかった。
最後まで犯人が誰なのかわからなかった。
犯人の顔写真が森山未來にも見えるし、松山ケンイチにも見えるし、綾野剛にも見えるから面白い。
信じてたのに裏切られたことへの怒り。
好きな人を信じきれなかった自分への怒り。
“怒り”の根源は“信じる心”なのかもしれない。
これはひどい
原作は知らないが、市橋達也著書の「逮捕されるまで」を読んでこの映画が市橋の事件をヒントに作られたということを知って興味を持ち、鑑賞。
3つのストーリーが入り混じってるので、途中からこれどうやってひとつのストーリーに繋げるんだ⁈と思っていたが、まさかの繋がらずに終了した。
指名手配の綾野剛の画像も明らかに森山未來には見えないし、3つのホクロなど伏線を張るだけ張っといて回収しない。
整形したことがわかりました!とテレビ報道で松山ケンイチを流すが、結局松山は何の関係もない。お粗末すぎる演出は指摘し出したらキリがない。
指名手配のポスターやホクロや整形逃亡、沖縄滞在など、市橋の事件をモデルにするならストーリーを同じにしてプラスで人間関係を描いた方がマシだったのでは。
豪華な俳優陣で、綾野剛と妻夫木はゲイが苦手な自分でも不快感なく、むしろ幸せになってほしいとすら思ったし、宮崎あおいは個人的にあまり好きではないが悲壮感漂う演技が素晴らしいと思った。
ただ高畑充希は突然出てきて「感じの悪い女」という印象しかなく、せっかくの演技派女優なのに生かしきれてないと感じた。
星は俳優陣がよかったので2にしますが、ストーリーは1未満という感想でした。
深く読み込む必要がある物語
犯人未逮捕の殺人事件から1年後、千葉、東京、沖縄という3つの場所に、それぞれ前歴不詳の男が現れたことから巻き起こるドラマを描いた。東京・八王子で起こった残忍な殺人事件。犯人は現場に「怒」という血文字を残し、顔を整形してどこかへ逃亡した。それから1年後、千葉の漁港で暮らす洋平と娘の愛子の前に田代という青年が現れ、東京で大手企業に勤める優馬は街で直人という青年と知り合い、親の事情で沖縄に転校してきた女子高生・泉は、無人島で田中という男と遭遇するが……。(解説より)
異なる3つ物語が同時並行で進行する。
結局犯人は誰なのか?
最後の最後までそれはわからない、スリリングな展開。
3つのストーリーが最終的に1つの物語になるのではないか?と推察しながら鑑賞していたが、そういった結末ではなかった。
ネタバレになるため具体的な内容は伏せるが、他の方のレビューを読んでいて、最後の犯人の行動を深く考察されている方がおり、「なるほど、(作者の意図は不明だが)そういった意味なのか」と納得し、非常に深いストーリーだと感じた。
それぞれの”怒り”が”信じること”が異なった色で描かれており
俳優陣が豪華すぎた。
ただ人が人に優しくしただけ…
八王子で起こった殺人事件。壁には「怒」の一文字が。
犯人はすでに別の場所へ移動し整形した疑い。
犯人像に近しい人物の3名をオムニバスで描いていき
犯人が誰かをそれぞれの物語で追っておいく。
人が怒りを感じるのは様々な因果関係がある。
誰かを信じて裏切られたら。
行き場のない怒りは赤の他人へ向かうことすらある。
米兵問題も混ぜ、かなりの問題作になり得る要素を持っていた。
決して派手なシーンなどないが、後半に至るまで
犯人は誰なのか?という一つのゴールに向かって走っていく物語は
退屈を覚えることなく進んで行きました。
釈然としない
豪華俳優陣が織りなす群像劇。
一見無関係の3つのドラマが同時進行し、やがて…という、
よくあるっちゃあるパターン。
結末が説明不足すぎて、スッキリしない。
え?あの目印は?それ許されたら何でもありでしょ。。。
胸糞悪いシーンが結構多いし、あまりオススメはしません。
期待したのに
無垢で気立ての良い女の子。
酷い目に遭った可哀想な女の子。
男たちに歯向かわない、守ってあげたくなる女の子。
しっかり者の一児の母。
にっこり微笑む病床の母。
施設育ちの賢そうな女の子。
麦茶をお盆に載せる気配りの主婦。
みんな健気で素直な、可憐な乙女。
男の理想には付き合っていられません。いい加減にしてほしい。
背後にある社会問題や、人間の不寛容さや脆弱さに深く切り込まず、ただ、“弱者は号泣という形でしか怒りを表せません”ということを描写している。
レイプされた少女は犯罪被害者だ。“可哀想な女の子”っていう立ち位置に違和感マックス。
被害者や弱者は号泣して諦めろっていうプロパガンダのよう。
俳優の熱演は素晴らしいけど、そこに頼っただけの映画だった。
誰に?何に?向けられた【怒り】なのか?
東京八王子で夫婦惨殺事件があった。
現場に残された被害者の血で書かれた【怒り】の文字の意味?
事件から一年後、
千葉県房総、
沖縄の離島、
東京都内、
3人の正体不明な男たちが現れる。
そして彼らが様々な登場人物と関わり映画が進んでいく。
カメラの切り替えが速く、頻繁に3つの場所は変わる。
話は少しづつ小出しにされて重層的な物語が少しづつ進み
解きほぐされて行く。
八王子の殺人事件の犯人・山神に似た3人の男。
田中に扮する森山未來、
田代を松山ケンイチ、
大西を綾野剛が
それぞれ演じている。
3人の正体不明の男の周辺にいる人々。
森山未來と仲良くなる少女に広瀬すず、
松山ケンイチの雇い主の渡辺謙と恋人になる娘の宮崎あおい、
そして綾野剛のゲイの友人に妻夫木聡。
殺人犯を疑われる男より、疑われたことによって起こる周辺の人への波紋、
それが詳しく描写される。
「疑うこと」
「信じることの難しさ」
「真実を語っていても、疑われる」
一体、血文字の【怒り】の示す意味は?
私には【怒り】のより、人を信じることの難しさ、
【信頼】について描かれた映画に思える。
もしかしたら犯人は、自分に対して怒っている。
憤怒の矛先が【善良な主婦のくれた一杯の冷たい麦茶なら?】
あまりにも理不尽で性根の腐った犯人。
この映画で本当に怒っていいのは、米兵に暴行された泉ちゃんだけだ。
ラストで腑に落ち、救われる映画だった。
俳優陣は豪華、映画としては駄作
まず、構成として3つの短編映画を1つの映画にまとめたような構成となっています。
で、長尺の映画なんですが、3つのストーリーそれぞれを1つの短編映画として見ると、時間不足のためもあるのでしょうが、ストーリーに深みがなく、どれも面白くないです。
さらに、たちの悪いことに、ストーリーに深みがないのに、無駄に過激なシーンを入れ込んであり、メッセージ性の薄い、ただ不快感を与える(一部の人は喜ぶかもしれませんが)、映画となってしまっています。
で、構成上、この映画の楽しみ方のポイントは、3つの短編映画を同時進行的に見ながら、誰が犯人かな?、と犯人探しをしながら観客がみれる、ということになるのですが、ミスリード誘導に頼り過ぎな上に、あっけない結末で、ミステリ的な仕掛けも稚拙です。
なので、駄作です。
俳優陣は豪華ですが、金出せば良い映画になるわけじゃない、という見本のような映画だと思いました。
んー、なんだろう、わかるんだけども…
タイトル通り作者の「怒り」を表現した作品という印象。妻夫木くんと松山ケンイチという大好きな二人が出てる!という理由で見てしまったこの映画。しかも森山未來に池脇千鶴に渡辺謙にもうすごいキャスト!キャストはすごかったけど、中身はちょっとこじつけ感が凄いなあ…と。最後まで誰なの!って感じなのは面白かったけど、見終わった後ちょっと心がやられる。。サイコパス的な怖さ。しんどい。人を信じることが出来なくなりそう…
人を見た目や印象だけで判断してはいかん!アメリカふざけんな!みたいな映画でした。
惹き込まれた
予備知識ゼロで鑑賞。
初っ端からグロテスク&ハードな展開。これから何が始まるのだろう。
ストーリーが進むにつれ少しずつそれぞれの過去が明らかに。
長い作品だか飽きることなくラストまであっという間だった。
宮崎あおいは言うまでもなくはまり役、何より驚かされたのは広瀬すず。
意欲的で重厚な人間ドラマだが・・・・・
本作は、東京の郊外で発生した夫婦殺人事件の容疑者として浮上した、東京、千葉、沖縄在住の3人容疑者を巡る3つの物語を同時進行させるという斬新な手法で、真犯人探しというよりは、容疑者を通して、人を信じることの難しさ、危うさを問う重厚な人間ドラマである。
3つの物語は、夫々、特徴があり、それなりに面白いが、互いの関連性はなく独立している。故に、同時進行の仕方に苦戦している。作り手は作品コンセプトに基づいて、やっているのだろうが、残念ながら、なんの脈略もなく物語が次々に切り替わっていくので、夫々の物語が途切れ途切れになり、密度が薄まって、散漫になっている感が強い。夫々の物語の完成度にもバラツキがある。
最も完成度が高いのは、千葉編だろう。容疑者(松山ケンイチ)をアルバイトとして雇っている男(渡辺謙)の長女(宮崎あおい)が東京で傷付いて帰省し、容疑者と次第に親密になり、同棲を始めるが・・・。容疑者の潔白を懸命に信じようとする長女、長女の幸せを願う父親の心情には自然に感情移入ができ、胸を打つ。宮崎あおいは、今までにない役処ではあるが、新境地を開いた感のある出色の演技で、傷心の長女の心情を見事に演じている。渡辺謙も流石の演技で、父親として、長女の幸せを祈りながらも、容疑者を信じる気持ちの揺れを見事に演じている。松山ケンイチの表情、特に目の演技も素晴らしい。過去を背負ってワケありで生きていることを眼付だけで演じている。怪しさ、不気味さ十分である。短編作品として成り立つレベルの完成度である。
それに対して、東京編では、容疑者(綾野剛)と優馬(妻夫木聡)との関係性が主題であるような物語になっている。綾野剛は容疑者というよりは不遇な人生を暗示させる演技に終始している。真犯人ではないかという怪しさ、不気味さ、怒りというよりは、不遇であるが故の優しさが目立つ。沖縄編では、基地があるが故の沖縄の悲劇による人間の怒りがクローズアップされている。しかし、肝心の容疑者(森山未來)は、得体の知れない不気味さは十分であるが、人間像が不透明過ぎで心情が見えない。演者の絶叫演技も気になって、感情移入できない。
東京編、千葉編、沖縄編の3つの物語を紡いで、人間を信じることの難しさ、危うさを炙り出そうとする作品の意図は理解できるし、俳優陣の演技も素晴らしかったが、3つの物語の同時進行という手法の難易度は予想以上に高く、未完の大器で終わってしまった。但し、無難な従来手法の繰り返しでは、映画は進化しない。今後も、斬新な手法の作品の登場を期待したい。
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