「考えさせられる一本」怒り Yさんさんの映画レビュー(感想・評価)
考えさせられる一本
発達障害かな?を抱えた女の子(宮崎あおい演じる渡辺謙の子)が、渡辺謙にとって幸せになれるわけないと思ってる存在という先入観に囚われている部分を上手く描いていると感じた。また、セクシャリティについての描写やレイプの描写も中々触れずらい所に手が伸びている映画であり、なんだかなあと今の社会構造について考えさせられた。「怒り」というタイトルは、みんなが自分に抱えてる自分自身に対しての怒りなのかなと作品全体を通して感じた。渡辺謙は、娘と松山ケンイチを信じてあげられなかった怒り、宮崎あおいは自分も同じように松山ケンイチを疑い、警察に通報し、信じてあげられなかった怒り、妻夫木聡も綾野剛を信じてあげられず、警察からの電話がかかってくる件が八王子夫婦の殺人犯人の件だと勘違いしてしまったことを後悔しているのもよく分かる。このように考えると、宮崎あおいもどこかで「自分が発達障害だから、相手がこんな自分を信じてくれる、愛してくれるわけない」と思ってたり、妻夫木聡も「俺がゲイだから、それを利用してなにか企んでいるんだろう」と、自分の何か普通とは違っている部分に対して苦悩を抱えており、それを相手にも同じように反映させてしまった、その後悔がよくわかる映画であった。
広瀬すずのレイプに関しても、少年が何も出来なかった悔しさや怒りがよく映し出されていると感じた。森山未來演じる男が壁に落書きで書いた文字を少年が消すシーンは、広瀬すずの言った「誰にも言わないで」を本当に守ろうとしているし、それに最後に気づいた広瀬ずずも、どうしたらいいかわからなくなっている部分が最後の叫びに現れてて、なんともいえない感情になった。
全体を通して、ここまで考えさせられる映画にあまり出会ったことがなかったので、映画としては面白かった。(私自身が考えさせてくれる余白のある映画が好きなためである)
