「言葉にできない」怒り Mizさんの映画レビュー(感想・評価)
言葉にできない
愛する人を信じることが、また疑うことが、正しいか間違ってるのかなど結果論でしかない。
他人がとやかく言えることでも、結果を知った後でタラレバ論を言えることでもない。
以下、ネタバレ。
犯人は、最後イカれたわけではないと思う。寧ろ、最後の最後が、森山未來なりの最大の優しさで、罪滅ぼし。
もしあの男の子に怒りを感じていたりのなら、那覇でとっくに殺すなりなんなりしているはず。だいたい、ポリスって叫んだのは森山未來本人だし。
終盤の唐突にイカれた感じは、演技。
自らへのやり切れなさに怒る男の子の感情を聞き、お前の味方にならなると言った。その約束を、自ら考え、実現したのだと思う。
怒りに狂ってるひとが、あんな長いわかりやすい文で「ウケる」なんて書かないよ。
男の子に、正当防衛の証拠をわざわざ残してあげてるだけ。また、広瀬すずも後からこれを見て、怒りというエネルギーを出させ、生きていってもらうために。怒りは、その反動で生きる力にもなるから。
「怒」の文字も、自分があの事件の犯人ですよと、自らわかりやすく示してるに過ぎない。だって、「ウケる」のに「怒」って、そもそも矛盾してるからね。
テレビのニュースでおそらく自分が遅かれ早かれ捕まるであろうことも察し、それであれば自分自らを使い、男の子を怒りから救うために考えた結論は、男の子から「最低な」自分に対して「怒り」を引き出させ、殺させること。
わざとナイフをちらつかせたり、首を絞める振りをして、その「怒り」を増長させる。演技でなく本気で殺したいのならば、あの男の子など簡単に殺せるだろうし、逆に殺される「ミス」などあり得ないだろう。
「怒り」に任せて殺人を犯した犯人が、時を経て、「怒り」の力で人を救おうとした。怒りの感情は、使い方次第で、善にも悪にもなる。
だから、タイトルが「怒り」。とても良くできた、考え込まれた作品だと思う。
ここまで気付けた人は少なそうなレビューが多い(最後森山未來が本当に狂ったと思ってるひとが多い)ことが、私の怒り。そりゃあ、心の動きが単純化された映画ばかりになってしまうわけだ。
Mizさん
妙に心に引っかかる映画だなと思い、レビューを辿っていたらMizさんの解釈にたどり着きました。
なるほど。おっしゃるとおりですね。ひとつひとつ、腑に落ちました。