「怒りって何?」怒り ヨッシーさんの映画レビュー(感想・評価)
怒りって何?
原作を読んだ上でみた。
小説や漫画が実写化されるとよく耳にするのが、原作の方が良かったという意見であるが、この映画は原作と同じくらい良かったという秀作である。
原作上下二巻の大作を二時間半足らずに収め、原作のような感動という言葉では言い表せない何かを与えてくれたこの映画には感謝しかない(ここまで言うと言い過ぎか。笑)
まず、上映後暫く座席をたてなかった。
余韻というかなんというかふしぎなかんかくが心にあった。
それは他の映画でもたまにあるのだが、今回だけはその感覚がレビューをかいている今も続いている。(尚上映後一時間は経ってる)
この作品のテーマは「信」そして、
「怒」
この怒りのたった二文字にはいろんな意味が詰まっている。
原作者のインタビューでこの作品は怒れないひとを描いたとあるが、たしかに、愛子にしても、優馬にしても、きちんと怒って、自分の気持ちを伝えていたら、あんなことにはならなかったかもしれない。
信じれたかもしれない。
その、テーマはこの台詞で表現されている。
「泣いたって怒ったって、誰もなにもしてくれない!!」
作品のなかでも泉がレイプ被害にあい、「誰にも言わないで。」と怒れない。
怒ることの意味、大切さを教えてくれる。
そして、もうひとつのテーマ「信」
愛する人を信じれるか?
この問いに僕は今まで即答でyesと答えてきた。
だが、この映画をみると本当にそうか?愛する人が殺人犯かもしれないって言われて、ある程度の物証もある時本当にその人を信じれるのか?と考えさせられた。
この答えは今も見つかっていない。
「何で、そんな簡単に人の事信じれるわけ?俺の何を知ってるって言うのでもないのに。w」
劇中で田中がいった言葉である。
この言葉が今も頭を離れない。
この映画(小説も)は多くの問いかけがある。そして、それに対する明確な答えを登場人物は示してくれない。なので、見終わったあともその問いかけの答えを考え続けなければいけない。
正直辛い。
しかし、いつかは考えなければいけない問題であり、簡単に「人を信じよう。そうすればどんな困難だって乗り越えられる。」と、答えを出す映画よりは分厚く重い。警鐘をならしてくれているのだ。
さて、ここまでこの作品を見て考えていたことを綴ってきたが、ここから演出に触れていく。
まず、最初に、主な登場人物紹介です。といわんばかりの、目まぐるしい場面転換もさりげなく繋ぎコンパクトにまとめ、なおかつ頭に入ってくるやり方がうまい。また、三人の怪しい男と出会う場面も上出来。
殺人現場の再現度が高くてびっくりした。また、最初の殺人現場で後の伏線をさりげなくはる手腕もさすが!
場面が変わるときにも、その前のシーンの二人の会話を音声で聞かせながら、新しいシーンへと移っていくのも、気持ちいいし、繋がっているのがわかって上出来。(説明下手ですいません