劇場公開日 2015年9月19日

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「青春の向う脛」心が叫びたがってるんだ。(2015) ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5青春の向う脛

2015年9月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

萌える

あの名作『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』と同スタッフ(原作者名がこれまた「超平和バスターズ」というw)!舞台も『あの花』同様に秩父で!再び高校生達の青春群像で!という、もう、期待しかないというか、そりゃ観に行きますよ!となりますわな。自分『あの花』には散々、涙を絞り取られましたから。はい。

いやあ!うん!期待通りというか、期待以上というか。少し、こう、何ていうのかな。『あの花』テイストを想像してると驚いてしまいますね。幽霊とかファンタジーとかじゃなくて、もっと地に足のついた、王道の青春モノというか。まあ、心象風景がファンタジーと呼べなくもないのだけど。

高校生達の青春、となると、そりゃあもう定番の「恋愛」が絡んできますわな。それは『あの花』でも同じで。ただし、今作自体がラブストーリーということではなく、「恋愛」ありきでもなくて、結果的にその要素がついてくる、というか。つまり、もうタイトルがそのまま物語の主体なんですよ。『心が叫びたがってるんだ。』という(『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』はなんのこっちゃ分からないですけど)。
幼少期、何気ない一言が原因で両親が離婚してしまい、それがトラウマとなり、言葉を話すことが出来なくなってしまった少女、成瀬順。言いたいことなら何千何万何億とあるのに、喋ろうとすると原因不明の腹痛を起こしてしまう。喋りたい。伝えたい。叫びたい。叫びたがっている。
それは他の主要キャラクター三人、坂上拓実、仁藤菜月、田崎大樹にも言えることで。喋れない訳ではないのだけれど、意思の疎通が取れない訳じゃないのだけれど、コミュニケーション障害ではないのだけれど、本音の部分はひた隠し。言いたいことには蓋をする(田崎は少しニュアンスが違いますけどね)。
そんな四人が「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命され、クラスでミュージカルをやることに……という筋書きで。

自分ね、本当のこと言うと、観る前はもっと大雑把だと思ってたんです、物語運びが。でも観てみると全然そんなことなくて。凄く繊細なんですよ。ひとつひとつの場面が丁寧で。四人の気持ちの移り変わりとか、意識の変化とか。それから、風景とか。この高校生活に没入してしまってたぐらいで。嗚呼、これこそが青春だなあ、と。普遍的だなあ、と。
そういった王道な流れの中に、テーマとしての『心が叫びたがってるんだ。』が鎮座していて。これは本編通して、ラストまで座したままなんです。

ハッピーエンドなんでしょうか。捉え方によっては違うのかな。まあ「恋愛」の要素に関してはハッピーとは言い難いのかもしれない。けれど、それも含めての青春でしょう。自分は、これもまた「幸せな終幕」だ、と受け取りました。

ロロ・トマシ