「雰囲気に流されるバカってウザイなと思った」心が叫びたがってるんだ。(2015) 竹田ケルさんの映画レビュー(感想・評価)
雰囲気に流されるバカってウザイなと思った
「後輩たちが、お前のこと『ウザイ』って言ってたぞ!」と、他人の意見を借りて「みんなが言ってるぞ」という雰囲気で人を傷つけるクズ主人公。
男にフラれたという個人的な理由で、自分が主役の舞台をボイコットする超自分勝手なヒロイン。
ガタイのデカさを利用してヒロインを恫喝する野球部員(のちに反省謝罪)。
美人でチアのリーダーで人望もあるのに、男と付き合ったりせずに、いまだに中学時代の想い人を慕い続けるという、男性の願望を具現化したような出来過ぎた女。
登場人物に、誰一人として感情移入ができなかった。
男にフラれたからと、イジけてボイコットしたヒロインが戻ってきたときに、クラスメイトが無条件で受け入れたことにも違和感を感じた。
個人的に、このアニメを見て、再確認したのは、
「物事の本質を見ないで、『友情ごっこ』『友達サイコー』という雰囲気に流されて、個人の意見を無視して、「お前のためだ」とおためごかして人を傷つけるバカって怖いよね」
ってことだった。
※おためごかし=実際は、自分の利益&自己満足のための行動なのに、「お前のためだ」という言葉でカモフラージュすること
この物語を見て、そう感じなかった人には、湊かなえ『告白』がオススメ。
引きこもりの男の子を、「お前のためだ」と追い込んでいく熱血体育教師のエピソードを見てみてください。
この作品に登場するクラスメイトたちの行動に通じる部分があります。
あと、細かい話になるけど、何年もまともに声を出してなかった女の子が、あんなに美声で歌えるものだろうか。
声帯も、発声のための腹筋も、使わなければどんどん衰えていく。
例えば、ずっとベッドで寝たきりで、数年間、まともに歩いてさえいなかった女の子が、急に起き上がって短距離走の選手になったら、誰でも違和感を感じるでしょ。
それと同じ。
ただ、ここまで言っておいてなんですけど、演出は非常にウマイと思った。
「あの花」の時もそうだったけど、音楽の使い方が非常にうまいので、物語がスカスカでも思わず泣かされてしまう。
自分も「理不尽なシーンだな」と思いつつも、ヒロインが体育館に登場したシーンで、思わず涙した。
このマジックに引っかかて、「物語が面白かった」と勘違いしちゃう人が多いんだと思う。