「ファンサービス満点です」HERO アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)
ファンサービス満点です
HERO は 2001 年に始まった検事ドラマで,とかく悪役にされがちだった検事のイメージを一掃するほどの影響を社会に与えたドラマである。このドラマのお陰で,司法試験合格者の中で検事を志望する者の数が激増したらしい。2007 年には映画化され,ドラマとの関連も大事にしながら見応えのある映画になっていたのが印象的であった。昨年,13 年ぶりにドラマの第2シーズンが放送され,今回2作目の映画が作られたという流れになっている。これまでのドラマと映画を全部見て来た者にとって,今作は特大のボーナスのような作品で,爆笑できる場面が多いのも特筆ものである。
今作では,第1シーズンで主人公九利生公平の事務官を勤めていた雨宮舞子が,立派になって帰って来ているのが大きな見所である。時系列では前作映画の続きということになっているのだが,この8年間に2人の間にどんな変化があったのかは全く語られていないのがむしろ潔いという感じがした。やはり,このシリーズのヒロインは雨宮でなくてはならないという思いを新たにさせるような展開に非常に満足したし,映画中で雨宮が九利生について語った台詞には思わず目頭が熱くなるほどであった。
それにしても,流石に 13 年という年月は長いもので,キムタクも 40 歳を過ぎ,アップになると加齢が感じられるようになってしまったのには,他人事ながらショックを受けてしまった。第1シーズンから着続けている茶色のダウンジャケットは相変わらず出て来るが,服装が同じだけに中味の変化が目に明らかになってしまうという皮肉な結果には同情したくなった。だが,古畑任三郎が田村正和にしか演じられないように,この役もまたキムタク以外に演じられる人はいないだろうと思われる。本作の終わり方を見ていると,更に続編を狙っているように思えたが,流石にもう無理があるのではないかと思えてならなかった。
服部隆之の音楽は非常に出来が良く,今作のために新たに書かれた曲も実に秀逸であった。故・児玉清が演じた鍋島次長の後任として,第2シーズン以降次長職に就いた牛丸検事の娘が父親にソックリという話は何度も出て来ていたが,今作で,一瞬だがその姿が拝めるのも嬉しく,これもまた爆笑できるネタになっていた。球技シーンでの音楽の選択や演出も大笑いできた。このシリーズは,間違いなく脚本家・福田靖の最高傑作だと思う。エンドタイトルでは第1シーズンのメンバーの懐かしい顔も見られ,徹底したサービス精神には嬉しくなった。(映像5+脚本5+役者4+音楽5+演出5)×4= 96 点(ただし,今までのドラマや映画を観ていない人にはもっと下がると思われる)