「1番に何を描きたかったのか・・・」HERO わんこぷんさんの映画レビュー(感想・評価)
1番に何を描きたかったのか・・・
この作品は検事が主人公の映画なので木村拓哉演じる久利生検事の活躍を描く群像劇となっています。しかし、連続ドラマとして2回、スペシャルドラマで1回、映画では今回で2回目と映像化が長い期間に渡って続くと、製作側もいろんなことを1つの作品に詰め込みたいという思いを当然持ってしまうと思います。この作品もそれにもれず、久利生が担当していた「交通事故」だけでなく、久利生のかつての事務官で今は大阪で検事として働いている雨宮検事の担当していた事件の証人が久利生の担当する事件の被害者であることから、雨宮が検事として8年ぶりに帰ってくる事はファンとしてとても喜ばしい事でしたが、これは単なる交通事故ではなく「大使館」という「治外法権」がありそう簡単には解決できない目に見えないものが「壁」となり立ち塞いでいて久利生の担当する事件の被害者である女性コンパニオンがどうして「大使館」の中にいてそして、何故靴が脱げた状態で大使館の敷地を出たすぐの道で車にはねられてしまったのかという事を証明するための証人としてネウストリア公国の人間に話を聞きたいが「大使館は日本の中の外国」であるため聞けず、外務省からも圧力をかけられる中で何とか久利生の「絶対に諦めない」信条等々もあって、最終的に被害者である女性コンパニオンを車ではねてしまった男性運転手を「不起訴」にするというのが大筋で描かれていたものの、久利生と雨宮が07年の映画のラストで「キス」をするシーンで終わっていたためこの2人の関係はどうなっているかもファンなら知りたいから描いているが、そこに今の久利生の事務官である麻木が「事務官から検事になった雨宮に憧れていて、久利生のような検事になる事を目指している」ために彼女はじめ城西支部の面々が何かと絡んできて「久利生と雨宮、そして麻木の三角関係」みたいな恋愛事情も入り、登場人物がネウストリア公国という架空の国の外国人が何人も登場するため顔がわかりづらい上に「事件の真相」を知るためのストーリー展開がとてもバタバタしたものとなっていて頭を整理しなくてはいけなくて、どれにもほぼ均等に比重を置いているものの1番に描きたかったものが何だか私にはわからず何もかも「中途半端」な形で終わってしまっているのがとても残念でした。久利生が担当していた「女性コンパニオンの交通事故」という事件も雨宮が担当していた広域暴力団による違法薬物疑惑とネウストリア公国大使館の公使と大使館員2人が絡んだ事件だと判明したものの、久利生は被害者である女性コンパニオンの遺族に「どういう経緯で彼女が車にはねられて死亡してしまったのか」という被害者遺族に寄り添うシーンもなければ、それをしないでネウストリア公国の「法」で裁かれる公使のところに麻木と一緒に出かけていったというお粗末なところでエンドロールが流れ始める始末で、「久利生と雨宮」2人の関係も何の進展もなく雨宮は上司に内緒で出かけてしまったために春から久利生も在籍した事がある「石垣支部」への異動が決まり、最後にいつもの並木道で出会うのだが久利生は特別な事は言わず、雨宮が振り返る事なく歩いていく姿をただ見送るといった1人の男性として女性の私からすると「全然、ずっと想っていてくれていた女心がわかっていない魅力のない男性」にしか思えず、雨宮の立場になって考えるととても切ない気持ちでいっぱいになりました。1番笑えるところというとずっと「牛丸次席に似た顔の田村検事の妻の顔」が携帯画面に出てきたところでしょうか。本当、事件解決までの描き方といい久利生と雨宮の関係といいどちらも「中途半端」なもう1度観に行きたいと思える作品では全くなかったので、とてもガッカリ感漂う残念な映画だと想いました。