「オタクを凹ませる気か!?」ゼロの未来 さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
オタクを凹ませる気か!?
未来世紀ブラジルの世界観と被る部分があります。が、本作では人間を支配しているのはコンピューターであり、マーケティングであり、過剰な規制です。通りには電光掲示板が多数置かれており、意味不明な広告が垂れ流しされています。
「今なら商品が100%オフです」とか。
公園のベンチの後には、携帯ダメから泳ぐことダメやら多数の禁止標識が置かれています。
これって、なんでもクレームつけてくる人達が増えた結果な未来のような気がします。
クリストフ・ヴァルツが演じるのは、コンピューター技師のコーエン。未来の仕事はまるでテトリスのようにゲーム的、いわば単純作業です。その単調な日々で、コーエンは精神を病んでいきます。
仕事はそのゲーム的なものを使って、「ゼロの定理」を解明すること。劇中何度も「ZERO MUST BE=100%」という機械的な女性の声がします。
このゲーム的なのが仕事で、部屋に閉じ籠もってこつこつやってる姿は、なんだか日本のオタクを揶揄しているように思えて微かに凹む。
またゼロ=単調な価値のない仕事を、100%の価値あるものにしなくちゃ。と理解したのですが、なんだかそこは、つまんない仕事でも家族の為に頑張ってるサラリーマンのパパ的にも思え、そんなパパがアダルトサイトの女の子とバーチャルの海岸でいいことしようとする姿とか、ちょっと諸々考えさせられてやっぱり凹む。
いつもブラックホール(虚無)を抱えて生きてきたコーエンが、愛を知るあのラストはハッピーエンドなのか、どうなのか。
この時流れるのがRadiohead-Creepです。歌詞がかなり卑屈というか、やはりオタク臭がする。
この歌、天使のような彼女に恋をした僕が、特別な存在になることを夢見る、厨二的な歌詞なのです。"でも僕はキモい男だから。どうしようもない男だから"って続く。
かなり泣ける曲なんです。
なんだかんだ言って、小難しいメタファーとか多用してるけど、テリー・ギリアム監督が描きたかったのは、この「Creep」の世界なのかもしれません。