「良くも悪くも予想通りのデキ。」劇場版 MOZU lylycoさんの映画レビュー(感想・評価)
良くも悪くも予想通りのデキ。
テレビシリーズの時からいかにもなハードボイルド気取りがきつい作品だったわけで、そこはまあ想定の範囲内なんだけど、今作の新キャラがまたいかにもな感じで萎える。伊勢谷友介もビートたけしも、あれじゃあただの無駄遣いだよなあ。松坂桃李演じる殺し屋、権藤も、キレキレの東とSeason1の中神を足して2で割ったみたいな造形は酷かったけど、あれはファンサービスというか、ほぼ本筋と関係ない新谷和彦を引っ張り出すための要員だからまだいい。対決シーンはそれなりに楽しめたし。
問題は「ダルマ」こと吉田駒夫だ。テレビシリーズから唯一残された謎の中心だ。それを、名前が児玉誉士夫のアナグラムになっているからといって、「戦後最大のフィクサー」なんて説明台詞だけで察しろというのは雑すぎる。キャラクター造形を放棄しているに等しい。実在の児玉誉士夫からくる連想をないものとして、劇中で描かれたシーンだけ見ると、生と権力に意地汚いだけのただの悪人にしか見えない。
自前の臓器プラントで子どもたちを飼育していたり、親しい人間の命を楯に優秀な人材をリクルートしたり、その延長で倉木の娘を殺していたり、「悪」の部分はそれなりに描かれている。けれども彼は、東が語る「オメラス」の寓話からも、「必要悪」として権力システムの中枢を担い続けてきた大人物のはずだ。ビートたけしの威圧感だけで押し通すのはいくらなんでも無理がある。ダルマは原作にないオリジナルキャラらしいから、ドラマ&映画の制作陣に清濁併せ呑む説得力のある悪役を造形するだけの力がなかったんだろう。
海外ロケの甲斐もあってアクション映画としては悪くなかったけれど、一番の興味の対象がとんでもない肩透かしだったせいで、正直、観終えてがっかりしてしまった。