「笑いは上々、話はメチャクチャ。」龍三と七人の子分たち 三遊亭大ピンチさんの映画レビュー(感想・評価)
笑いは上々、話はメチャクチャ。
「龍三と七人の子分たち」見ました。
この映画、とても面白かった。笑えた。
見る前にチラッとレビューを見たら、笑ってるのは年配だけって書いてあったが、僕は普通に笑いましたよ。笑いの部分は本当に面白かった。ただストーリーが酷いというか、ペラペラでした。
まずお笑いの部分は、主人公がジジイだけど強面元ヤクザという設定が上手く活かされてる。序盤の詐欺師と金の引き渡しをする場面とか、蕎麦屋でカップルとオッさんにからむ場面、競馬場の5:5の場面もそう。一番笑ったのは矢島健一さんが訪問販売に来て、奥の部屋でジジイ達と遭遇する場面。北野武監督作品ではお笑い要素ってたくさんあるけど、この場面みたいにスピード感があって捲し立てるようなテンポは珍しい気がする。あとはあれです、龍三の100歳の担任の先生とすれ違う所。本当にくだらないんだけど、話の流れと上手く絡んでるし、なんと言ってもあの100歳があの後どーなったかすごく気になるんですよ。お笑い出身の映画監督として、ここが北野武と他の監督の違う所だなとシミジミ思った。
お笑いは面白かったけど、ストーリーがビックリするぐらい酷い。まず待てど暮らせど何にも起きないし、ジジイ主導のスローペースが続くんです。所々で笑えるから耐えられたけど、これがアウトレイジ的なヤクザ映画だったら途中で席を立ってました。退屈になってしまった理由は、いくらなんでも話(ジジイの行動範囲)を広げ過ぎた。もうちょっと狭い世界の話でも良かったし、むしろそっちの方が元ヤクザで今はしみったれてる話としてはもっと笑えたはず。
ここは絶対不要だろ〜って場面や設定もかなり多い。一番目立つものだと、セスナ云々の下りと、ラストでバスの中に敵が1人紛れ込む所。この二つの場面は特に意味が分からないし、荒唐無稽な話がより際立つだけで、悪でしかない。これ以外にも首を傾げたくなる場面はたくさんある。ダーツに剃刀が刺さる所とか、いたる場所で拳銃をぶっ放すのもそう。ラスト付近で早撃ちのマックと京浜連合佐々木がオフィスで意味の分からない掛け合いをする場面も酷かった。まず何を言ってるのか分からないし、その掛け合いは結局はやりっぱなしで、なんのオチも付かなかったのは非常に残念。こーゆー悪ふざけを見ると、北野武がスターキャストを並べて本気でフザけたかったんだなって思いました。それはもちろん構わないけど、映画として作るならもう少し詰めて欲しかった。
カメラワークとか脇役の扱いを楽しめたのは最高。北野武映画の楽しみ方の一つはこれですからね。”間”の使い方は相変わらず絶妙でした。
北野武映画は相変わらずキャストが素晴らしいと再確認した。藤竜也さんはスゲーかっこいいのはもちろん、近藤正臣さんは凄かった。藤竜也さんと近藤正臣さんだけが本物の元ヤクザにしっかり見えました。勝村政信さん、萬田久子さん、安田顕さんも良かった。ビートたけしも良かったです。あのダラけたビートたけしの雰囲気が凄く合ってました。ビートたけし史上最上級のハマり具合ではないでしょうか?
総じて、かなり駄作に近いです。
笑いは上々、話がメチャクチャ。
半分づつ評価を分け合う印象です。